はりねずみ通信

2023.02.12

生存者バイアス SURVIVORSHIP BIAS

人間は、自分が正しくものごとを見て、それにより適切に行動できると思っている。ところが、我々の気がつかないうちに、世界を理解するための論理的なエラーが起こってしまうことがある。それがバイアスである。

第2次世界大戦の時、戦地から生還した飛行機が調査された。敵の砲撃を受けた箇所の局在が調べられたのだ。よく攻撃される場所がわかれば、その部分を強化すればより強い飛行機を作ることができる。研究者たちはそう考えた。
しかし、これには大きな論理的エラーがあった。敵地から帰還した飛行機は、墜落せずに帰還したわけであるから、これを調べても墜落しにくい飛行機を作るためのアイディアは得られないはずである。研究には、墜落した飛行機のデータを含める必要があったのだ。この論理エラーを生存者バイアス、と呼ぶ。

私たちはよく、成功した人の本を読んだり、講演会に出かけたりする。
お金持ちになった人の話しを聞けばお金持ちになれる、ダイエットに成功した人の話しを聞けば痩せられる、と思いがちである。しかし、これは生存者バイアスである可能性が高い。成功した人の周りには、おびただしい数の失敗した人がいる。成功した人と失敗した人のいずれからも学ぶことが、本来必要である。

医学の話しすると、学会などでベテランの先生が上手に手術するのを見ることがある。しかし、本当に手術が上手くなりたいのであれば、上手ではない人、上手くいかなくて苦労している人の手術を見なければならないはずだ。ところが、そういった人が学会で登壇することは少ない。すなわち、学会そのものがバイアスにかかっている(笑)

よりよい学びの場を作るためには、私たち獣医師はどうしたらよいか。
それは、うまくいかなかったことを安心して公表できる場をつくること、ではないか。
だれも自分の失敗を話したくないので、この計画は困難であるかもしれない。けれど自由に発言できる場を作ることが、最適であると信じている。

SURVIVORSHIP BIAS

People believe they have the ability to see things clearly and act appropriately. However, we sometimes make errors in logic in our understanding of the world without realizing it. This is  bias.

During WWII, planes that survived the battlefield were studied. The precise location where the aircrafts were hit by enemy fire was investigated. If you knew where the most hits occured, you could strengthen those areas to build  stronger planes. The researchers agreed.

However, there was a major error in logic  in this. Because planes returning from enemy territory did not crash,  the researchers should not have been able to come up with ideas for planes based on that data. Data from crashed planes would have had to be included in the study. This is referred to as survivorship bias.

We frequently read books by successful people and attend their lectures.
We have a tendency to believe that if we listen to the stories of wealthy people, we will become wealthy, and that if we listen to the stories of successful dieters, we will be able to lose weight. This, however, is most likely due to survivorship bias. There had to be a huge group of unsuccessful people surrounding the successful ones . It is critical to learn from both successful and unsuccessful individuals.

In terms of medicine, I’ve seen veteran doctors perform operations expertly at academic conferences on occasion. However, if you truly want to be a good surgeon, you should observe the surgeries of people who are not good at it or are struggling with it. However, such individuals are rarely seen at academic conferences. In other words, academic societies are biased☺

I’m now looking into ways to improve the learning environment for veterinarians. I’d like it to have a way to include “non-survivors” who are excluded because of survivorship bias. In other words, it must be a place where people can feel comfortable disclosing negative experiences. This project will be challenging because no one wants to discuss their failures. However, I believe that this is feasible if we can create an environment in which people can talk openly.

 

 

 

2件のコメント

  • 先生、ご無沙汰しております。
    動物病院は増えていますが、相変わらずかかりつけを決めかねている我が家です。
    遠方ですので最後の砦の金井先生、時々HPを見ても更新されておらず検索をかけると英語や博士号。。。(決してストーカーではありません。笑)
    研究者になられるのかと思って少し心配しておりましたらHPがリニューアルされ、ホッといたしました。
    お世話にならずにいられたら越したことはないのですが、来月9歳を迎えるホワイトシェパードとじゃじゃ馬3歳ゴールデン、いつ何があるか分かりません。
    その折はよろしくお願いいたします。
    はりねずみ通信、楽しみにしております。

    • 坂崎さん、おひさしぶりです!お元気ですか?
      私は以前と中身は全然変わりませんので、どうかご安心ください(笑)。
      また、いつでも相談してくださいね!

  • 金井先生、お久しぶりです。
    ジュディーがいなくなり、あんなに通っていた病院にも全く行かなくなり寂しく思います。
    ありがたい事にメロメは元気なので、また5月頃に健康診断に伺おうと思ってます。
    生存者バイアス。
    確かに、失敗から学べる事って多いですよね。
    いい面だけ見て決めつけずに、広い視野を持つようにしたいなと思います。
    お忙しいと思いますが、また楽しみにブログを読ませていただきますね!

    • ジュディーちゃんが亡くなり、寂しいですね。
      元気が出るようなブログを書きたいと思いますので、楽しみにしていてくださいね。

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