PLDD(経皮的レーザー椎間板除圧術)
私たちは現在まで1000例以上の動物たちにPLDDを行ってきました。PLDDはきちんと対象を選択し適切に治療することで、高い治療効果を得られる治療法です。椎間板ヘルニアが疑われるときは、ぜひ相談してください。

PLDDの特徴
PLDDの最大の特徴は、低侵襲であることです。
動物の場合、全身麻酔が必要ですが、切開は必要なく、体につく傷は針の穴だけです。この針から直径400μ(1ミリの半分以下)のレーザーファイバーを導入し、椎間板の中央部でレーザー照射を行います。内科的治療と外科治療の中間の治療法と考えてもいいでしょう。
適切なケースに対し最適な状態で行えば、椎間板ヘルニアに対し根治的な方法です。
PLDDの利点
- 短期間の入院 (通常1泊2日、または日帰り)
- 治療時間が短い(麻酔時間は1時間前後)
- 傷口がない
- 出血がない
- 施術後に歩いて帰ることができる
- 多発性の椎間板ヘルニアに有効である
PLDDの問題点
- すべての椎間板ヘルニアに対応できない
(髄核が大きく脱出したハンセンⅠ型ヘルニアには有効でないことがあります) - 実施施設が少ない
- 治療まで時間を要す
- ハンセンⅠ型ヘルニア
- 当院では今までさまざまなケースでPLDDを行ってきましたが、急性に起こるハンセンⅠ型ヘルニアに対しては現在でも外科治療を優先して行っています。ハンセンⅠ型ヘルニアでは、椎間板の中央部の髄核が急性に脱出し、脊髄の圧迫を起こす病態であり、ちょうど交通事故で脊椎を損傷したときと同じような状態が神経に生じます。そのため、圧迫している椎間板物質を急いで取り出さないと、神経が永久的にダメージをうけてしまいます。PLDDでは椎間板の圧力が1ヵ月くらいの間に徐々に減少していくため、このような急性の病状には対応できません。
PLDDの安全性について
PLDDは大きな傷をつくらない治療法ですが、椎間板中央にレーザーの高いエネルギーが照射されます。
このため、「椎間板を焼いて大丈夫か」という疑問は獣医師からも寄せられます。確かに理論的には椎間板の中心部の髄核は、脊椎の運動にとって重要な役割があります。レーザー照射によりこの髄核に変化が生じることは、なんらかの問題を引き起こす可能性も否定できません。しかし、正常な構造を壊すことは外科的手術でも起こり、その程度はPLDDのほうがはるかに小さいものです。
実際の治療例でPLDDを行ったことによる後遺症などはほとんど起こりません。これはPLDDに用いる専用のファイバーが発達したことや、適切なレーザーの照射量が確立したことによります。また、Cアームを使った椎間板中央への正確な針の穿刺により、多くの副作用はほとんどが回避できると考えられます。
ただし、そのためには施術者の技術的な裏付けが必要です。
ミニチュア・ダックスフントの椎間板の直径は1センチに満たず、厚みは1〜2ミリです。その中央に正確に針を穿刺するためには、高い技術が必要となります。

PLDDが適している場合
- 繰り返し椎間板ヘルニアの症状があるとき
- 疼痛や麻痺が徐々に進行する場合
- 多発性のヘルニア
- 内科的治療を一定期間行っても、改善が見られない場合
- 疼痛が強く、鎮痛剤が欠かせない場合
- 高齢であったり基礎疾患があるため、外科手術が難しいといわれたとき
PLDDが適していない場合
- 長期間麻痺が続いていて、現在歩行できないとき
- 急に立てなくなり、ハンセンⅠ型椎間板ヘルニアと診断された場合
- MRIなどの検査で椎間板ヘルニアの突出が非常に大きな場合
椎間板ヘルニアと診断されたとき、PLDDが適しているかは症状や画像診断などによって総合的に判断します。
できるだけ早期に治療を開始する方が、よい結果を得られることが多いので、わからない場合はいつでも相談していただければと思います。