はりねずみ通信

2017.09.13

One Health

今度のJBVP(日本臨床獣医学フォーラム)年次大会のテーマは、One Health(ワン ヘルス)である。
これは、人の医療と動物の医療はひとつ、という概念で、1800年代に病理学者のウィルヒョウが動物と人との「比較病理学」を提唱したことにはじまるという。
人と動物には共通の感染症や似た病気があり、双方で協力することにより、よりよい社会をもたらすことが期待されている。

私は、自分自身が腹腔鏡や胸腔鏡などを用いた内視鏡外科に取り組んできた過程で、多くのことを人の医師から学んだ。
とても驚いたのは、医師はオープンマインドの人が多い、ということ。
お医者さんが獣医に手術を教えることに、どれだけメリットがあるのか。それなのに、どうして熱心に教えてくださるのかが皆目わからない。
キーワードは「Pay Forward ペイ・フォワード」である。
尊敬する内視鏡外科医の笠間先生は、海外で武者修行しているとき現地の医師に、
「教えてくれたお礼をしたい」
と言ったところ、
「ペイ・フォワードすればいいよ」
と言われたのだそうだ。つまり、後進たちに返していけばいい、ということである。
内視鏡外科に携わる医師の方々は、このペイ・フォワードの精神を持つ方が多いように思う。

私も、いろいろ教えてもらったお礼を医師に言うと、
「将来僕たちも動物医療から返してもらうことが必ずあるから、いいんだよ」
と何度も言われた。
かっこいいし、そういう考えに憧れる。

だから、いまは未達だが、いつかは医学に恩返しがしたい。
小さな動物から大きな動物まで扱う私たちに近い分野は、小児外科である。
体重1kg台の犬の胆嚢摘出を行うノウハウは、新生児の内視鏡外科を行う医師に役立つのではないか。

偶然だが動物用ドライボックス(腹腔鏡練習ボックス)を埼玉県の企業とともに開発を進めていたところ、小児外科医からも問い合わせがあり、人医療でも使われるようになる、とのこと。

いつかは夢の日が来ることを。

IMG_3072
ちょっととおります

 

1件のコメント

  • こんばんは(*^^*)
    「Pay Forward ペイ・フォワード」
    かっこいいですね!!
    命を救う現場には、命の重さなんてないのだと感じました。

    • コバシさん、人間はいろいろと問題がある生き物ですが、その中でうまくいっているひとつは医学だと思います。
      よいことを伝承して洗練させていくことで、ひいては患者さんのためになっていくのだと思うんです。

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