はりねずみ通信
2015.10.15
PLDDが広がるために
昨日は他施設でPLDD(経皮的レーザー椎間板除圧術)の出張手術を行ってきた。
終わったあと食事に行ったとき、その施設の若い獣医師にPLDDの感想を聞いた。話には聞いたことがある治療法だけれど、実際見るのは初めてだったそうだ。
神経の病気に関心があるその先生は、
「正直、あれで本当に治るのか、と思いました」
と言われた。
通常椎間板ヘルニアの治療は、皮膚を切開し、骨を削り、飛び出している椎間板を切除する。
それは明確な物理的な行為であるので、治るのは腑に落ちる。手術後の画像診断でもはっきりと証明できる。
PLDDの場合は、皮膚につく傷は針の穴だけだし、治療前と治療後では画像診断でも変化が確認できないことも多い。
とすると、納得できないのも無理はない。
私はPLDDが正しく広まる(つまり、適切なケースを選び、間違いない手法で施術する)ことを望んでいる。
学会などでも発表するし、要望があればどこでも出張して指導するつもりである。
でも、なかなか広まらないのは二つの要因がある。
ひとつはCアームという大型のレントゲン装置が必要だということ。機械を使用できる広さの手術室をもつ施設は少ない。また、Cアームの価格も高価である。
もう一つは、エビデンス(証拠)が少ないこと。
文献上ではほとんど見当たらない。
教科書や米国の専門誌で掲載されていない治療法は、にわかには信じられない。そう言われることも多い。
その問題を払拭するため、
1.Cアームを用いず行える方法を確立する
2.できるだけ多くの施設で導入してもらい、実績を積む(獣医師の腑に落ちるように!)
この二つが今後の課題である。
あとは、実際PLDDを受けた動物たちがどれだけよくなったか、飼い主さんからの声を集めるのも重要だと思う。
PLDDには椎間板ヘルニアを治癒に導いたり、悪化を予防する効果がある。
椎間板ヘルニアの動物たちに治療のチャンスが与えられるために、この課題は(私が生きているうちに)達成したい。
1件のコメント
熊本県で開業しております。磯江と申します。コメント失礼致します。先生のPLDDに興味がありますが、先生のコメントの通り、Cアームがネックになっている獣医師の1人です。X線透視装置はあるので、なんとかならないかと思っています。また被爆量も気になって、それ以上の考えに及んでいないという状況です。たまたま本日もヘルニアの手術があるということで、PLDDできるようになりたいと思ったところでした。先生の2つの課題、応援しています。
磯江先生、コメントありがとうございます。
臨床をやっていると、日々椎間板ヘルニアの治療に悩まれると思います。PLDDができると、治療の幅が広がり、痛みや麻痺に苦しむ動物が救われるチャンスも増えると思うのです。来年中くらいには何らかの形をお示しできるようにしたいので、どうか応援下さい(^^)