はりねずみ通信
2015.11.04
農家の人
愛知県新城市で勤務医をしていたとき、犬や猫などの小動物以外に、牛や豚などの診療も往診でしていた。
昨日のような霧の多い朝、「調子が悪い牛がいる」という連絡を受け往診車で牛舎へ向かう。中庭に車を駐め、ひとり牛舎に入ると、牛たちの体温で中は少し暖かい。すこしすると農家のSさんがやってきて、
「こいつが調子悪いんだよ」
という。診察の結果、軽いケトーシスのようだったので、鼻につけたロープを牛舎の柱にかけ、首の静脈から静脈注射を行う。牛は調子が悪くなると、耳の根っこが冷たくなる。その牛もそうだった。
治療が終わって片付けていると、Sさんはビニール袋に入れた白菜を往診車に入れ、これ食べたらいいよ、と言った
「こういう霧の多い朝は、あとは天気がよくなって、昼はあったかくなるんだ」
そう教えてくれた。
おもえば、動物たちを飼育する農家の人と知り合いになれたのは、私にとって宝である。
自然や動物のことを、私の何倍も観察し、ずいぶんいろいろなことを教えてくださった。
昨朝は霧が多かったので、お世話になった農家の人のことを思い出したのだった。
0件のコメント