はりねずみ通信
2018.03.15
腹腔鏡下胆嚢摘出術
動物の胆嚢疾患は非常に多い。
2月の最初の週は、1週間連続して毎日腹腔鏡下胆嚢摘出の手術が入っていた。
胆嚢は、「肝臓でできた胆汁が十二指腸まで流れる途中に一旦胆汁をためておく袋」である。
消化管と連続しているので、しばしば感染を起こしたり、感染に伴い結石ができたりする。
もうひとつ重要な病気には、胆嚢粘液嚢腫、というものがある。
胆嚢の内側の粘膜から分泌される粘液が固くなり、胆嚢に貯留する。ゼリー状に固まった粘液は、胆嚢の中に蓄積してゆく。
それにより、胆汁の流れが悪くなり黄疸を起こしたり、圧力に耐えきれなくなった胆嚢が破裂したりする。
胆嚢は摘出しても問題がない臓器と考えられているので、薬の治療で改善しない場合は胆嚢摘出術を行う。
私は2008年から胆嚢摘出術を腹腔鏡で行っていて、現在まで100例以上の手術を行ってきた。
取り組み始めた理由は、動物では胆嚢摘出時の死亡率が高いので、より安全で侵襲の少ない手術法があれば合併症や死亡率を減らすことができると考えたからである。
人の医療では当たり前のように行われている腹腔鏡下胆嚢摘出術は、2008年当時、行う人はほとんどいなかった。
動物の胆嚢や胆管は非常に繊細なので、難易度がとても高いからであろう。
4年前から、仲間と研究会を立ち上げ、医師の指導を受けて術式を検討してきた。
現在は、さまざまな課題はあるものの、標準化した方法で行うことにより、合併症をきわめて低くすることが可能になった。
文献上では、動物の腹腔鏡下胆嚢摘出術の症例数は、米国で行われた20例が最大である。比較的軽症のものを選択して手術対象としている。
この20例のうち、腹腔鏡で完遂することが困難で開腹移行したケースは3割と書かれているので、動物の腹腔鏡下胆嚢摘出術の難しさがわかっていただけると思う。
当院では黄疸を伴う重症の手術を含むにもかかわらず、5%以下の開腹移行率となっている。
ここまでやってこれたのは、医師の萩原先生やSAMITメンバーのおかげである。
慢心するつもりはまったくないけれど、せっかくここまでやってきた成果を、胸を張ってリスボンで発表したいと思っている。
2件のコメント
こんばんは(*^^*)
リスボンでの発表、頑張ってくださいねっ!
胆嚢疾患の子がそんなに多いのかと驚きました。
幸いなことに今まで暮らした子にはありませんでした。
先生の手術で元気になれますように!
そして、安全で低侵襲の手法が広まりますように。
あ、、
今日は声をかけていただきありがとうございました!
先生の笑顔に接すると嬉しくなります(*^^*)
ノームのと時間を丁寧に過ごしていきます。
コバシさん、商店街〜郵便局の界隈は昔ながらの雰囲気があっていいですね。あのあたりを歩いているとほっとします(^^)