はりねずみ通信
2015.10.22
腹腔鏡の指導
以前当院にPLDD(経皮的レーザー椎間板除圧術)の見学に来られたH先生は、ちょうどそのとき当院で行った腹腔鏡下卵巣子宮摘出術(避妊手術)をみて、このたび腹腔鏡の機器を導入された。
はじめて腹腔鏡をはじめる場合、いろいろな障壁がある。2次元での視野、特種な器具、気腹操作、セッティング・・。これらを自己流で行っていくと、技術の習得に非常に時間がかかってしまう。だから、昨日、指導に出かけてきた。
私は今まで、さまざまな人の指導を受けてきた。絶対に外してはいけない原理原則を守ること、器具の選択や取り扱い、組織の扱いなど、多くのことを教えてもらったから、今この手技ができている。
「いつかは自分も人に指導ができるようになったらなあ」
とずっと思ってきた。人の腹腔鏡外科では、教えてもらったことをひとに教えていく、というオープンな雰囲気があり、それにあこがれていたのである。
以前、研究会でこんな話を聞いた。
ある腹腔鏡外科の医師が、海外研修で多くの技術を習った。研修が終わったとき、その医師は、
「これまでとても親切に教えてもらったので、何かお礼がしたい」
と言った。その時、指導医の先生はこう言ったのだ。
「私に返すのではなく、誰かに返してあげなさい」
(「ペイ・バックではなく、ペイ・フォワードしなさい」)
私は肥満外科の名医であるK先生のこの話を聞き、医療のあるべき姿がはっきりわかったような気がしたのだった。
私が指導した施設の院長も、勤務医の先生も、
「いろいろな疑問が解決できて、よかった」
と言ってくださった。腹腔鏡が安全に行われ、治療の恩恵を受ける動物が増えることはうれしい。
同時に、私も誰かに「返すこと」ができたことも。
2件のコメント
今日、飼い主さんから電話もらいました。
とても喜んでいただきよかったです。
私にまで温かい言葉を言ってくださり
とても嬉しい気持ちになりました。
ありがとうございます。
もあの母さん、紹介していただきありがとうございました。できるかぎりのことはしたいと思っています。
むむむーーーー!
肥満外科ーーーーー?
先生の貴重なお話の内容を一瞬で消し去る4文字・・・
「肥満外科」(*_*;
すみません・・・それだけに反応しました(^^ゞ
先生は、動物医療の伝道師ですね!
普通なら自分の技術は「特許」のように、守りたいでしょうに・・・
先生のような方は、動物医療における「ノーベル賞」受賞者だと
思います。
これからも、ますます突き進んでくださいね!
Hanakoさん、僕は門外不出というような考えがあまり好きではなく、多くの人がオープンに議論することで、新しい地平を見たいと思います。
応援してくださいね。
肥満外科という分野は、遺伝や病気で肥満になる患者さんを、消化器のルートを変更することにより治療する腹腔鏡外科なんですよ。
高い縫合技術が必要で、腹腔鏡外科医の中でもとてもスキルの高い人たちが取り組んでいます。近年、病的肥満に伴う糖尿病が、この手術により治癒することがわかり、大きな注目を集めています。