眠っている才能 | はりねずみ通信| 姫路の動物病院かない動物病院

飼い主のSさんが、血液検査機器メーカーのM社にお勤めであることを知って驚いた。
Ｍ社といえば、血球計算器の世界一のメーカーである。

近年、血液の成分である赤血球や白血球・血小板などを測る技術が急速に進んでいる。
昨年当院に導入した機械も、フローサイトメトリーという技術を用いてそれらの数をカウントしている。いままで顕微鏡で細胞の種類を「目で見て」分類していたものを、機械が勘定してくれるのだ。
　
一個一個形態が違う細胞を、機械がどうやって数えるか。
細い溝の中（血液細胞1個がやっと通れるぐらい）に血液を流し、ひとつひとつの細胞にレーザーを当て、その反射を測定してカウントする。フロー（流れる）サイト（細胞）メトリー（勘定する）とは、そういう技術である。

その細い溝を掘る技術者が、Sさんなのであった。
詳しくは企業秘密になるそうなので書けないが、目には見えない大きさの細胞を流す「溝」は、機械では彫れないのだそうだ。
手の感覚だけを頼りに、溝を作っていく。その技術習得のためには、1年ほどの訓練が必要とのこと。

しかも、驚くべきは、Sさんら技術者の方は、専門の学校を卒業した人ではなく、最初はまったくの素人なのである。
「手の器用な人、アルバイト募集」
のような求人を見て、集まった人の中から、才能のある人を選りすぐるらしい。

ふつうの人の中に、驚くべき素質が眠っている。それを掘り出す企業もすごい。Ｓさんも、最初は自分の才能に気がついていなかっただろう。

私たちの体の中には、まだ見ぬ才能が眠っているのかも。

ひとりね