はりねずみ通信

2016.03.18

特発性乳び胸の手術法

神様は一度に答えを出さないものである。

犬や猫に見られる特発性乳び胸は、稀な疾患である。いろいろと不明な点があるが、現在心膜切除と胸管結紮、乳び槽破壊を組み合わせると治癒率が高くなることが知られている。
全身のリンパ管が集合して胸腔内に入る。それが胸管である。
なぜ難しい疾患といわれるかというと、この胸管の走行位置がはっきりとわかっていないからである。
そのため、いくつかの手技を組み合わせて、リンパの流れを修正することで、やっと成果が上がりはじめた・・。特発性乳び胸治療は、現在そんな段階と言える。

先日書いた「どろぼう理論」で私が推論したのは、従来胸管が「犬では右側、猫では左側を走行している」という定説に疑問を投げかけたものだった。
右か左かは、右利きか左利きの違いのようなものである。
手術を行った犬で調べた胸管造影の結果を見ると、1−2割の確立で「左利き」がいる。
どろぼうのどちらの手に手錠をかけるか・・。
あらかじめ調べたほうの手に手錠をかけるのも一法だ。けれど、反対側に胸管の側副路ができることが多い。それでも治癒するのは、心膜切除でリンパ圧を下げているから。それがどろぼう理論の骨子であった。

どろぼうの両方の手に手錠をかけることができれば、すべては解決する。
それを片側からのアプローチで行うことができれば、低侵襲性と高い治癒効果を兼ね備えた究極の手術法になるはずである。
それを昨日、行うことができた。
(明日に続く)

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にんきのかわいいけづくろい

 

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