はりねずみ通信
2015.11.21
決断と勇気
ミニチュア・ダックスフントのマロンちゃんは14歳で、腹腔内に大きな腫瘍があった。他の施設からの依頼で当院に来院した。
検査の結果、肝臓に腫瘍があることがわかった。
通常、高齢の犬でこのような大きな腫瘍がある場合、手術をしない、という選択肢もある。
多くの飼い主さんは、そうかもしれない。
ところが、マロンちゃんにはいくつかよい点があった。
・全身状態がよく、食欲も元気もある
・軽度の心臓弁膜症以外、大きな基礎疾患がない
・肝臓の腫瘍が左葉にできている
犬の左側の肝臓は、動脈や静脈、門脈系が一カ所に収束しているので、手術が比較的容易なのである(容易といっても、いろいろな面で難しい点はあるが、右の肝臓の手術よりは・・という意味で)。
ほとんどお腹がはち切れんばかりの腫瘍だったので、手術は無謀と思われるかもしれない。
でも、逆に考えると、ここまで大きくなるまで、全身状態が悪化しなかった。肝臓の腫瘍のタイプは、悪性度の低いものの可能性がある。
犬には、肝細胞癌という癌がある。これは、癌ではあるが、ゆっくりと成長し、転移も起こりにくい。マロンちゃんの腫瘍も、肝細胞癌の可能性が高かった。
今週の水曜、開腹手術にて肝臓の腫瘍を切除した。手術時間は1時間ほどだったが、マロンちゃんは乗り越え、本日退院する。
腫瘍の重量は約1キロだったが、マロンちゃんはもともと腫瘍を含めた体重が3.5kgしかない。つまり、今は2.5キロである。
私は医学的な意見を言ったのみである。治る可能性もあるが、リスクも十分にある。
信じて手術を決断したFさんの勇気を讃えたいと思った。
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