才能について | はりねずみ通信| 姫路の動物病院かない動物病院

昨日の話の続きになるのかもしれないが、だれにどんな才能があるかは、はじめはわからないものである。
苦手なことを頑張らせるより、得意なことを伸ばしたほうがいい、とはよく言われることだ。問題は、その人の才能を「見抜けるかどうか」である。

看護師の福嶋は、もともと愛犬美容学校の卒業である。
犬のカットを学んできたから、動物の扱いはとても上手だ。でも、手術の助手に特別な才能があることに、私は最初気がつかなかった。空間識別能力が優れている、といえばいいのだろうか。

手術はある場所を展開し、その中で切開や剥離、縫合などをする。目の前に邪魔な組織があれば、避けたり、切開するときに反対側を牽引して組織の緊張性を高める（カウンタートラクション、という）ことが助手の役目である。
彼女は、その「場を作る能力」が非常に長けているのだ。
腹腔鏡のカメラ係もうまい。
先日も、犬の避妊手術をしていて、カメラの視野が私の見たい方向に向かって先へ進むのを感じて、舌を巻いた。時間にすると1秒もないくらい。だが、はっきりと目的を持って視野を捉えに行く。

二人羽織をして、他人の箸で食事をするともどかしいだろう。手術もそうである。助手は自分自身ではないので、思うように動いてくれないのは当たり前だ。だから、「もっと引っぱって」とか、「ここを押さえて」とかの指示を行う。もちろん福嶋にも指示はするが、８０％は自分で考えて先に動いてくれる。彼女は、二人羽織をさせてもストレスなく他の人に食事を食べさせられるのではないか。
おそらく、脳の特定の分野が発達しているのだろう。美容師の道に進んだら、その才能は発揮されただろうか。

他のスタッフにも、それぞれ個性があり、才能があるはずである。
私はどこまでそれを見つけてやれるだろう。

とびおりるひとをおいかけるまえ