はりねずみ通信
2015.10.29
手加減なし
ル・ポン国際音楽祭が姫路パルナソスホールで行われているので、聴きに行った。
ベルリンフィルのコンサートマスターである樫本大進さんが、姫路・赤穂に縁がある方なので、毎年この地で行われていて、今年は9年目になる。すごいレベルの室内楽が、こんなに近くで聴けるのは、なんだかもったいない気もする。演奏はとにかくすばらしい。奏者の意気込みも相当なもので、まったくの手加減なしである。
手加減がないのはプログラムにも表れている。
昨日はモーツアルトの弦楽5重奏、レーガー「愛の夢」、フリューリングのクラリネット3重奏、コルンゴルトのピアノ3重奏曲というメニューである。
私はモーツアルト以外の作曲家の曲は初めて聴いた。室内楽に詳しい人ならよく知っている曲なのかもしれないが、普通の人は滅多に聴かないような曲であろう。大衆にわかりやすい音楽を、というコンセプトは「全くない」ことがわかる。
ちまたでは、クラシック音楽を啓蒙するため、誰もが知っている曲ばかりを演奏する傾向がある。そのため、新しい曲に触れる機会が少なく、うんざりしている人も多いのではないか。またベートーベンか・・(もちろん、ベートーベンもすばらしいのであるが)。
樫本大進さんは日本人ではあるが、ロンドンで生まれ、ほとんどの音楽活動をヨーロッパで行っている。
基本的なメンタリティーは欧州人であろう。
これは私の体験であるが、欧州の人は手加減しない(と一括りにしていいかどうかわからないが)と思ったのは、以前イギリスを旅行したときのこと。
ロンドンの駅でスーツケースを傍らに置き、いかにも旅行者である風情で佇んでいたとき、イギリス人と思われる人が、私に話しかけてきた。
「○○へ行くには、どうしたらいいの?」
今着いたばかりのような旅行者に、そんなことわかるわけない。しりません、というと立ち去ったが、相手がその辺の地理を知る人かどうか、とか、そもそも英語が通じるか、とかを全く意に介していないのが不思議でならなかった。
日本人は、相手のことを慮(おもんぱか)る民族である。
ある意味親切なので、それはそれでいいのだが、相手のレベルに会わせて目線を下げることも多い。でも、そうやって手加減することは、必ずしもその人のためにならないこともある。
理解できる、できないに関わらず、相手に本物を差し出す。それがその人に響くかどうかは、神任せ。
そういう立ち位置も、結構クールだなあ、と思ったのだった。
1件のコメント
本日、モカの脾臓摘出手術 無事に終わったとの連絡を受けました。
全身麻酔も乗り越えてくれたようで安心しました。
まずはありがとうございました。
病理検査の結果を待ちます。
私もクラシック音楽を中学生の時から聴き始め、樫本大進の演奏も聴きました。
それは1988年、彼がまだ9歳の頃。
私が生のクラシック音楽を初めて聴いた時のコンサートで
ソリストとしてモーツァルトを弾いていました。
私自身、クラシック音楽を手探りで聴き始めた頃で、メインのブラームスSym No.1しか
記憶にないですが、今やベルリン・フィルのコンマス。
大きく羽ばたいた彼の演奏を聴ける機会が毎年訪れるル・ポン、
聴きに行かねば!と思いながら今年も所属オケの練習録音で見送り。。。
先生のブログを拝見して、来年こそは!と思った次第です。
モカの飼い主さま、モカちゃんは手術後すぐに食欲もあり、落ちついていますよ。
オーケストラに所属されているのですね、すてきですね。
音楽のことはときどきハリネズミ通信にも書きますので、どうかおたのしみに(^^)