はりねずみ通信
2015.06.23
学会会場で
腹腔鏡外科の分野は、獣医外科領域ではまだまだマイノリティーである。
今回の学会でも、数例の発表があったが、会場での反応は厳しいときもある。
「それがほんとうに低侵襲ですか?」
という意見が多い。
ある施設が腹腔鏡外科の発表をした。
手術した動物の回復が早いことを示すため、「術後数時間で、すぐ食事が食べられるようになった」と言ったことに対し、座長の先生(大学の著名な先生)がこう言った。
「手術後、食事を食べたことに、何の意味があるんですか?そもそも、そのタイミングで食事を与えることはいいんですか?手術時間が長かったようですが、本当に動物の負担が少ないと言えますか?」
かなり厳しい意見だった。
すると、私の友人のA(私と同様に腹腔鏡外科に取り組んでいる)が手を挙げた。
私は内心、Aが座長の先生に食いつくのかと、どきどきした。
すると彼は座長の先生に、ではなく、発表した先生にこう言ったのである。
「内視鏡外科は、長嶋茂雄がかっこよく送球するようなスタンドプレーではなく、きちんとした考え方や手順に基づいて行われるものです。そういうふうに進めていくのがいいと思います」
(正確な表現ではないが、このようなニュアンス。彼は会場を沸かせるのがうまいので、長島選手のフォームをまねする彼を見て、会場は一気に和む)
私は「さすがだな」と思った。
あの場で座長に意見するのは、座長の先生の顔をつぶすことになる。あえて内視鏡外科を行う側を律することで、我々が真面目に取り組んでいることのアピールになるし、なにより未来への展望が開けるではないか。
黎明期の腹腔鏡外科を、誰もが受け入れることができるように育てていかなければならない。
私もその気持ちは同じなので、Aに「よく言った」と褒めてやった。
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