夏の終わりに | はりねずみ通信| 姫路の動物病院かない動物病院

動物病院で仕事をしていると、1年に切れ目がないので、8月が終わるからといって何かが変わるわけではない。ただ、ツクツクボウシが鳴き、秋らしい風が吹き始め、「空がちょっと高くなったか」と上空を見上げる頃になると、胸の奥がちょっと痛む。
それは、子供の頃に感じた「ああ、夏休みが終わる」という虚しさである。

小学校の3年の頃だったか、私は夏休みを遊びに遊び、やらなければならない宿題をのろのろとやっていた。ドリルを２章ずつやると、8月はじめまでには終わる、という計画を立て、8月に入ると4章ずつやる計画に変更。そして8月の末に熱を出し、寝込んでしまった。
31日に確認すると、宿題の大半が未完成である。
9月1日の提出が絶望的だったため、確か先生に頼んで、1週間ほど猶予してもらった。

この歳になっても、いまだにその悪夢が蘇り、ツクツクボウシを聴くと哀しくなる。

もう宿題などないので、気楽に過ごせばいいはずだが、大人には大人の課題がある。しかも、それは連綿と続いていくものだ。
それを哀しく思い返すのは、リタイヤしたあとだろうか。

でも、こうしてリアルな現実と向き合っている今のほうが、ずっといいに決まっている。
たくさんの苦労の中に、輝くような一瞬があるからである。

はみでる