はりねずみ通信
2015.02.28
信頼
猫の行動で、やや奇妙だと思われるものがある。
わざわざ人前で排泄する、という行為である。
はじめは偶然かと思っていた。猫のトイレを交換するとき、新しくなった砂の上で排泄をするのはなんとなくわかる。きれいなトイレを見ると、「もよおす」のだろう。ところが、別にトイレの掃除をしていない状態でも、私がそこにいるだけで排泄をするのを何度も経験した。見せに来るのは、私と一緒にいる時間が多い2匹の猫である。
普通は隠す行為を、あえて見せるということは、信頼の証と考えていいかもしれない。
動物にとって、排泄行為をするときほど無防備な状態はなく、敵に隙(すき)を見せることになる。多くの場合は、人目につかない場所でする。それをあえて「さらす」ことで、「あなたには警戒心はないですよ」と示しているのだ。これは、犬がお腹を見せて寝転ぶのと同じであろう。
思えば人間にも同じような行為はある。
私の大学の友人は、洗いざらい自分の失敗を話すことで、相手の警戒心を解く。「オレは裸だから」という。彼のまわりに友人が多いのは、弱みを見せることで人と人の垣根を低くしているからだろう。私はなかなかそれができないので、いつも羨ましく思う。
食事をする、という行為も、本来は無防備なことであるので、敵に狙われる危険がある。だから一緒に食事をするということは、お互い警戒心がないことを確認する作業ともいえる。ビジネスの現場で、商談相手と会食をするのは、そういう意味であろう。
猫の話しに戻る。
通り道で寝転がったり(またいで通らなければならない)、天井に腹を向けて寝ているのを見ると、警戒心がないのも程(ほど)がある、と思う。試しに首筋に噛みついてみても、ごろごろいっている。そんなふうだと野生ではひとたまりもない。
信頼しすぎると、生き残れないのでは。
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