はりねずみ通信
2018.06.20
低侵襲治療
左右の膝の手術を受けるように勧められたが、迷っている。
卵巣に病気があり、乳腺にも腫瘍がある。どちらも手術しなければならないでしょうか。
そういう相談を受けることが多い。
手術の必要性は理解できるが、いまはそんなに症状がないし、何度も手術を受けさせるのが辛い。
その考えは、もっともだと思う。
手術に対する恐れは、大きく分けて二つある。
ひとつは麻酔の心配。
もうひとつは、痛みや傷など手術侵襲の心配。
麻酔に関しては、「一般に考えられているほどのリスクはないですよ」とお話しする。麻酔の安全性には十分配慮しているので、よほどの基礎疾患(心臓病や内臓異常)がない限り、それほど心配しなくてよい。
問題は「体への負担」のほうである。
私は、動物の体に負担が少ない治療法に関心があり、現状の治療がより低侵襲に行えるように取り組んできた。
当初は、
「傷が小さい手術が、動物の体に負担が少ない」
と考えていた。
しかし、さまざまな取り組みのなかで、今確信しているのは、
病気を治すことが、一番の低侵襲治療である。
ということ。
たとえば、膝の手術は、関節を大きく開けたり、骨を切ったりする操作が必要である。
できるだけ侵襲を少なくしようと配慮しているが、負担がゼロにはならない。
やはり手術をうけることは「たいへんなこと」である。
けれど、それをきちんと行うことで、毎日使う足の痛みがなくなったり、将来的な骨関節症や靱帯損傷を予防できるようになる。
膝の心配をせずに、思いっきり運動ができ、健康なコンディションを保てるようになる。
つまり、病気から解放されることで、将来にわたって身体の負担が減少する。
一度の手術で病気の心配がなくなるのなら、それが動物にとって一番低侵襲なのではないか。
そう思っている。
最も治療効果が高く、よい結果を得られる手術。なおかつ身体に負担が少ない手術。
それらを両立するのは難しいことも多いが、求めるところはそこである。
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