はりねずみ通信
2016.05.23
他施設での手術
「先生、勇気がありますね」
東京の動物病院の勤務医、T先生は言った。
私が、持参した手術道具を並べているときのことである。
たしかにホームグラウンドから離れて手術をすることは勇気がいる。道具は持参できても、周りの環境がまったく違うからだ。
ただ、今回はそうしなければならない理由があった。
特発性乳び胸を胸腔鏡で手術してほしいと依頼のメールがあったが、犬の呼吸困難がひどく、姫路までの移動がむずかしかったからである。
直前まで飼い主さんにも動物にも会えないことも、懸案だった。
でも、主治医の先生からデーターをいただいたり、飼い主さんともメールや電話で何度も相談し当日を迎えたため、通常の場合と変わりなく進めることができた。
胸腔鏡下で心膜を切除し、左右の胸管を同時に周囲組織と一括して結紮する手術(both en-block)は無事終わった。
胸水がきちんと止まるかは、まだ経過を見なければならないが、術後の状態はよいと連絡をもらった。
受け入れて下さった施設では、スタッフが一丸となって協力して下さり、麻酔や周術期管理、カメラ係や助手は完璧だった。また、メーカーの方が必要なディバイス(持って行けない機器類)を貸して下さり、本当に助かった。多くの方の協力があって、はじめてできたことだと思う。
(留守を守ってくれた当院のスタッフにも感謝!)
私も勇気があったかもしれないが、見ず知らずの獣医師に手術を託して下さった飼い主さんの勇気を本当に讃えたい。
よくなることを祈っている。
駅員さんに荷物を調べられないか、ちょっと心配だった。
テロ、ではない。
1件のコメント
私も思いました。難しい手術をいつもと違う手術室、スタッフの方、機械そして、実際に診察したことない犬。
言葉で上手く表現できませんが先生のこの犬を元気にしてあげようと言う想いが凄く感じました。
いつもそうですが金井先生の獣医師としての
熱い愛情を感じます。
そして、お人柄も。
この犬の飼い主さんも、電話での説明とか声で大丈夫だと信じたと思います。
私は、長男犬が肝正検の話が初めて話がでた、4年くらい前にかない病院を覗きに行った事あるのです。
やはり、どんな病院かどんな先生か心配で…
その金井先生に妹犬達も今ではお世話になって
感謝しています。
獣医師としてはもちろん、動物にたいしての愛情はいつも伝わってきています。
私も心配性なのであれこれいつも、おばさん根性で質問して… すみません。 これから家の犬達もシニアなので色々あると思いますが犬はもちろん、私の心のケアも宜しくお願いします(((^^;)
もあの母さん、特発性乳び胸は治すことがむずかしい病気で、今までに治せなかったことも多かったのです。だから、動物の身体に負担が少なく治癒率も高い手術ができるようになった今、可能な状況であればなんとか治してやりたいと思っています。
人間の心にも関心がありますので、なんなりとご質問下さいね(^^)