はりねずみ通信
2016.01.27
乳び胸覚え書き2
当院で特発性乳び胸の手術を胸腔鏡で行うようになって3年ほど経つ。
フォッサムらの方法(心膜切除と胸管結紮)を胸腔鏡で行なえるのではないか。そのアイディアは、他国の獣医師も当然持っていて、いくつかの論文が出ている。
しかし、特発性乳び胸が稀な疾患であるため、数例単位の報告しかなかった。
不明だったのは、乳び胸が再発するメカニズムである。
胸管結紮で縛ったはずのリンパ管が、また漏出をはじめる。リンパ管そのものが肉眼で観察しにくく、手術中のリンパ管造影も技術的に難しいため、どうして再疎通するのかはよくわかっていなかった。
転機が訪れたのは、偶然のことである。
ラスベガスで行われていた関節鏡セミナーに参加したとき、それに参加されていた臨床獣医師のK先生が、大学でリンパ管造影の研究をされていたのだ。
K先生によれば、肛門粘膜から造影剤を注射し、CTを撮ると簡単に胸管が造影される、とのこと。その通り行うと、本当に簡単にリンパ管の走行がわかる。これは、本当に興奮した。
なぜなら、それまでの方法は開腹して腸間膜リンパ節から造影剤を注入するか、膝窩リンパ節から長い時間をかけて造影するしかなかったからである。これらは、煩雑で時間もかかるため手術中に行うには(できないことはないけれど)難しかった。
とすれば、術前にCT検査をし、手術を行なったのちにもう一度検査すると、リンパ管が再疎通するメカニズムが明らかになるはずである。
そこがはっきりすれば、どういう手術法を選択すべきかの基準が確立し、動物に最小限の負担で治療ができるようになるはずだった。
ところが、得られた結果は想像と異なるものだった。
(つづく)
新しい施設が建設途中である。25日に上棟した。あっというまに建物の形ができる。
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