はりねずみ通信
2014.12.25
メリークリスマス!
「この子が死んだら、私も死にます」
Tさんは真顔でそう言った。
Tさんが飼っているトイ・プードルのアイちゃんは、少し前から下痢や嘔吐の消化器の症状があり、血液検査では肝臓の数値が高かった。消化器症状は、対症療法で落ちつき、アイちゃんはいたって元気である。
でも、詳しく調べてみると、門脈シャントがあったのである。
正式な病名は「門脈体循環シャント」という。
食べたものは腸に流れていき、腸から門脈という血管を通って肝臓に到達する。そこで代謝され、血となり肉となるのだ。ところが、生まれつき門脈に奇形がある動物がいて、消化管から出発する門脈が、途中で分岐して静脈に流れてしまう場合がある。すると、まだ代謝されていない物質が体内に循環することになり、さまざまな症状を引き起こすことになる。
アイちゃんの場合は、シャント血管はかなり太いが、症状があまり出ないタイプのものであった(CT検査で診断する)。
だから6歳になるまで、ほとんど無症状で過ごしたのである。
でも、それを放置すると、今後、肝性脳症を発症する危険があったため、手術の提案をしたのだった。そのとき、Tさんが言ったのが、冒頭の言葉である。
昨日手術を行い、無事おわった。
手術は腹腔鏡下で行い、左胃静脈から横隔膜静脈を介して後大静脈につながるシャント血管を体腔内で結紮した。そのあと、腹腔鏡下で避妊手術も行って、終了する。麻酔の覚醒もよく、夕方食事を与えるとぺろりと食べた。
術後電話をかけると、涙を流して(たぶん)喜んでおられた。とても心配されていたのだ。
Tさんはだいぶ高齢になってからアイちゃんを飼いはじめ、いままでひとときも離れたことはない、という。自分の分身のように思っているので、「アイちゃんが死んだら・・」という言葉は、決して大げさな表現ではなかった。わたしも、それは十分承知の上で、リスクも含めよく相談して手術を行ったのである。責任を果たせて、ほっとする。
午後からは、他施設からの紹介で、猫の乳び胸の手術を行う。2人の獣医師が見学した。
胸膜炎が非常に強く、心膜切除と胸管結紮がとても難しかったが、無事終了。
昨日のミッションは、達成した。
片付けが済んで、スタッフみんなを見送っていると、看護師の橋本がおずおずとやってきた。
「先生、こんなの食べます?」
差し出されたのは、彼女の手作りのアップルパイだった。みんなのために焼いてきたとのこと。
そういうことをするタイプじゃないと思っていたので、
「へー、女の子っぽいこともするんだ」
と、つい言ってしまう(これは失言)。「こんなの食べます?」とぼそぼそいう言い方が橋本らしかった。
パイはちょっと甘かったが、おいしかった。(ありがとう!)
そうだ、クリスマス・イブだったのである。
6件のコメント
メリークリスマス! 新しいホームページを見た時、大学病院みたい!色々な科がある!って、嬉しく思いました。安心して、診て頂けます。
先生、ありがとうございました。先生から、大丈夫ですよ!と言われたら凄く気持ちが落ち着きます。安心しました。
クリスマスが、嬉しく楽しいのは、子供頃と20代だけでした。今は、ワンコの為に、カボチャのケーキを作る位ですね・・。
姥桜さんへ。
もう、今年も終わりですね。ワンコちゃん達は元気ですか?
日本犬って、頭がいいですね。年に一回甲斐犬に会いに行くのですけど、しっかり覚えていてくれています。年を取ってしまい、少しボケがはいってるらしいんですけど、覚えてくれて、まるで子犬のように甘えてくれます。そこは、甲斐犬一匹と、ピットブル五匹います。皆、しっかり覚えてくれていて、嬉しいです。私も、日本犬、飼いたいんですけどね・・。又、病院で逢えたら、触らせて下さいね!
きなこさん、大人になって静かにクリスマスを過ごすのもいいものですね。
カボチャのケーキ、いいですね!
手術を乗り越えて元気になろうとしているあいちゃん、とらちゃん、いい顔してますね~
クリスマス・イブも忘れるくらい今年も一年突っ走ってこられた先生、お疲れ様でした。
先生のおかげで、元気になった動物達や飼い主さん、願いも空しくお星さまになった動物達・・・
いろんな事があった一年だったと思います。
ホームページもリニュアルされて、気分も新たにまた次の年に向けて挑戦ですね!
くれぐれもお体だけはご自愛いただき、パワー全開!いつまでもチャレンジ精神を忘れない、そんな先生でいてください(^_-)
(飼い主さんの手記のところに自分の記事が載っててビックリしました。これからも、また毎日覗いて、たま~にコメントさせていただきますネ!(^^)!)
一年間ありがとうございました。カレンダーも届きました。ありがとうございました。
くうちゃんママさん、今年一年ありがとうございました!わたしにとって、いろいろな意味ですばらしい一年でした。関わりを持った動物たちのことを想って、年末年始を過ごしたいと思います。来年もがんばりますよ!
コメント投稿出来てましたね(^O^)
私も『もし茶豚が死んだら…生きていけんかも』て言ってます。実際には黒子や熊五郎も居るのでシッカリしなきゃならないんですが(汗)
我が家はとりあえず今日で今年の通院は終わり、病院の顔である小原さんだけ挨拶して帰りました(肝心なカクチャン先生は忘れてた(笑))
先ほど、いつも読んでるblogを見たら『あれ?この手術って…あれ?この手術室って…あれ?この後ろ姿って…金井先生ちゃうん!?』
兵庫○○○医療○○○の獣医さんじゃないですか( ̄▽ ̄)
姥桜さん、ぼくも調べてみたら手術中の写真が載ってましたね。後ろ姿も、なかなかいいです(^_-)
メリクリ❤ですo(^o^)o
30日から病院は、お休みですよね。診療時間の表をみると、31日まで全日出勤になってますが、これはどういう事なんでしょうか?まだなんか、どうみればいいのかわからない、オバサンです。
レックスさん、ホームページの表は間違ってますね。なおしておきますね。
昨日は電話すみません。今日はレックスを連れてこなくてもよくなりました。また連絡しますね。
Tさんの「この子が死んだら・・」の気持ちよくわかります。
でもあいちゃん、手術成功よかったですね。飼い主さんはもちろんですが、
先生もほっとされましたね。
先週最終回テレビドラマの、米倉涼子主演「ドクターX」のセリフ「私失敗しないから」とのキメゼリフ、先生とかさなります。
我が家のニャンコのちぃーも、このところ、体調が思わしくなくて、心配のあまり、一日中監視しているので、家事はもちろん、家族の食事もずーっと手抜きです。どうしたものか?と反省はするのですが・・・。
先生飼い主の心療内科の増設をお願いします。
はなさん、ホームページのソフトがはなさんのアドレスをスパムと認識してしまっていたようなので、解除しました。表示が遅くなりすみません。もう大丈夫です。
ドクターX見ていないですが、「失敗しないから」は、とても言えません。
ちぃーちゃん、心配ですね。また相談しましょうね。
おはようございます。
Merry x’mas☆も終わってしまいましたね。。
あいちゃんの飼い主様は先生からの最高のクリスマスプレゼントでしたね(^^)
安堵されたことでしょうね。一緒に年越しできますね^ ^
あいちゃんも、とらちゃんもまた元気になれて良かったです(^^)
飼い主様のお気持ちも分かります。
私も、いろいろ一緒に乗り越えたアニーへの特別な想い。ありますね。
離れている時間の方が多くて心身に我慢させていることが多いだろうな。
やら、いままで色んな葛藤がありましたが・・
一皮むけたというか、私なりに強くなったのか、、あと何年いれるかは分かりませんが、元気にいてほしいです!
橋本さんのアップルパイいいですね^ ^。一生懸命作ったんでしょうね(^^)
とても愛らしいです〜(^^)
わたしも食べてみたいです。きっと美味しいはず^ ^
先生!私も言われる側のキャラクターとして、それは失言です(笑)!
買ったやつ作ったと言ってるんやろ?と、よく言われました〜(^^;;
けど、橋本さんはお菓子作りしそうな感じにみえますが、違うんですね
・・・(^^;;笑。
うちは、姉も私も家を出る大人になるまで毎年ずっと同じクリスマスプレゼント(色違いとか)が枕元に置いてありました(^^)
母がレジで、クリスマスのラッピングで。とか言って買ってる姿想像すると、
なんて可愛らしいんだろう。と思いました(^^)
子供の頃は、絶対子供が開けないような戸棚に長靴のお菓子が隠されていたんですが、母のズボラな面が出た年は、ガラス戸の食器棚にそのまま入れてあり
、そこの食器棚からお皿取って〜。とか普通に言うので、この気まずい空気はどうすれば??(^^;;とか、子供心に思ってました(^^;;
大人になってからは枕元にプレゼント交換。してましたね(^^)
なつかしいです(^^)
そして先日、母がタンスの中に孫にあげるプレゼントを隠してるのを見ました(笑)
ちなみに、昨日は「メリークリスマス。祝。」と、母から
メールがきてました。笑^ ^
先生も、クリスマスの思い出ありますか??(^^)
今日は、今年最後の診察、お願いします!
アニさん、アニさんのお母さん、かわいいですね(^^)そういうクリスマスの思い出があるのは素敵です。
ぼくは教会学校に行っていたので、アドベントのろうそくが一本一本増えていくのがなんとなく楽しみでした。