はりねずみ通信
2018.07.05
アンネ・ゾフィー・ムター
アンネ・ゾフィー・ムターは、天才的なヴァイオリニストとして知られている。
指揮者のカラヤンに見込まれ、才能を開花させたことでも有名である。
彼女の演奏は華々しく、カリスマ性がある。
私自身は、あまり華麗な演奏が好きではないので、いままで聴いてこなかった。まあ、それは好みの問題である。
実際にどんなひとなのか。
昨日彼女の特集をテレビで見ると、意外な印象を受けた。
もともと天才と言われた人が、カラヤンに引き上げられ表舞台に立った。だから、順風満帆な人生で、迷いのない自信たっぷりに生きてきたひとだと思っていた。
演奏の華やかさが、そういう印象を強くさせたのかもしれない。
ところが、そうではなかった。
カラヤンと出会った当初、予定されていたヴァイオリンコンチェルトをプログラムから外される、という憂き目にあった。
カラヤンが「表現が未熟である」と断じたからである。
それでも、謙虚にそれを受け止め、黙々と練習を続け、翌年認められるに至る。
本人曰く、
「未熟なのは自分が一番よく知っているから、ショックでも何でもなかった」
とのこと。
素晴らしい才能を持っていても、それにうぬぼれることなく自分を客観的にみることができる人なのだ。
また、多くの批判にも遭った。それらは「完璧すぎて、暖かみがない」など、あまり根拠のないようなものである。
もしかすると才能がある人へのやっかみなのかもしれない。
そういった批評にも耐え、自分のやるべきことにだけに焦点を当て続けた。
そういったことが、彼女がいまでも輝き続けている理由だと思う。
自分は何にフォーカスするか。
それが明確にわかっていれば、褒められようが、けなされようが関係ない。
常に落ち着いて、すべきことをするだけ。
彼女はそういうことを教えてくれた。
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