はりねずみ通信
2016.12.17
そういう人種
「もし先生の飼っておられる動物が同じ病気になったとき、手術されますか?」
とよく訊かれる。
これはもちろんイエス、である。
自分の飼っている犬や猫にできない手術を、よそさまの動物に行うわけにはいかない。
病気の治療という観点からは、かならずそうしてきた(うちの犬の椎弓切除やPLDDは必要があり行った)。
ただ、胸を張ってそう言えるかというと、ちょっと躊躇する気持ちもある。
やはり、心理的にナーバスになってしまう、ということが一点。
人間のお医者さんも、自分の家族の手術は他の医師に任せる方も多いようなので、これはお許しをいただけるか・・。
もう一つは、バイアスがかかっている、ということ。
飼い主さんが冒頭の質問をする背景に、獣医師としての客観的意見を聞きたい、ということがある。
つまり、だれがどんな状態でも、そう決断するものなのか、ということだ。
ところが、ある治療を提示する際、私は「ひいきの治療」を勧める傾向がある。
PLDD(経皮的レーザー椎間板除圧術)はよい治療だという惚れ込みがあったり、腹腔鏡で治してやりたいという意思がはたらく。そのため、本当に意味で客観的かどうかわからない。
そういったバイアスはできるだけ排除したいが、なかなかうまくいかない。
最近では、
「これは私が長年取り組んできた治療なので、いわばひいきの治療です。いろいろな情報を集めたり、他の獣医師の意見を聞いて、客観的に判断してくださいね」
と言っている。
課題としては、新しい手術法がきちんとしたデータに基づいていることを示すこと。これは今後、かならず取り組みたい。
それと飼い主さんは、
「先生は自分のやりたい治療を勧めてるんじゃないか」
と一歩引いて見ていただきたい。
病気を治したい人種であるので、どうしても客観的になれないのだ。
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