はりねずみ通信

無題

第2次世界大戦のとき、ナチスドイツによるホロコーストの大虐殺があった少し前に、ナチスドイツによって障がい者や精神病の人が虐殺されていた。その事実が近年明らかになり、先日ドキュメンタリー番組が放映されていた。

社会的弱者を社会の「荷物」とみなし、排除しようとしたそのことは、後のホロコーストにつながったのである。ナチスドイツが一線を越えてしまったのは、その事実があったからである。

私がこの番組で、とても注目した見たことは、このときドイツの精神科医たちが、弱者の虐殺に自らの意思で荷担した、という事実である。このことについて、ドイツの精神科医たちはずっと口を閉ざしてきたが、近年その事実を認め、謝罪している。謝罪の中には、はっきりと「医師たちが、強制されたわけではなく、自らの意思でこれを推し進めた」と書かれている。

その背景について、このように放映されていた。
当時、精神病は治らない病気といわれていた。ところが、一部の疾患は治癒が可能であることがわかってきた。医師たちは、その事実に歓喜した。治せなかった病気を、自らの手で治癒に導くことができる。それは、医師であれば誰でも夢見ることである。ところが、治すことができる病気がある反面、どうしても治らない病気もあった。そのことについて、医師たちは大きなフラストレーションを感じるようになった。
目の前にいる、治らない患者たちをみて、「このひとたちが、消えてなくなればいい」と、医師たちの心に恐ろしい考えが浮かんだ。そのわずかな心の隙間と、時代背景が重なり、弱者の排除につながった。そして、それがホロコーストにつながっていったのである。

私が戦慄したのは、当時の精神科医たちの行為ではなく、私自身の心である。
私も彼らと同様、病気が治らないことに日々フラストレーションを抱え、治せなかった動物が亡くなったとき、ある安堵の気持ちが起こる。難しい病気を治したときの喜びが大きければ大きいほど、治癒に導けない動物たちのことが、強く心にのしかかる。こういうことを書くと、飼い主さんを失望させるかもしれないが、日々そのような感情で生きている。

だからこそ、治せない病気を治せるように努力したいと思うが、思えば思うほど、欲求不満は高まっていく。なぜならば、治せない病気は「なくならない」からである。
そういう見地からみると、私も当時の精神科医と同じ道を歩む可能性がある。けっして人事とは思えなかった。

人間の常識や価値観は、その人が生きている時代により影響される。人間は弱いものであるから、時代の価値観を吹き込まれ大きく間違うこともある。


ひとつだけ確かなことは、命の価値について、人間は値踏みをしたり、評価を下したりする立場にはない、ということであろう。
そして、病(やまい)をもっている動物たちを、ありのまま日々支えていくのが、私の努めだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

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