はりねずみ通信

コアラ

「オーストラリアにコアラを見に行った」
と友人に言うと、
「ベタな観光だな」
と言われた。

私たちが滞在したオーストラリアのタウンズビルという町からフェリーで20分くらいの島に、自然保護区があった。そこに野生のコアラが生息している。
実は私も「いまさらコアラなんて」と思っていた。動物園でも見たことがあるし、旅行者が抱っこして写真を撮っている光景はうんざりするほど見ている。ユーカリを食べ、日がな一日樹上で暮らしている。そんな動物であろう。
そう思っていたが、自然保護区の山を歩いていると、そんな気持ちは吹き飛んでしまった。


北半球では冬であるが、空は抜けるほど青く、日差しは厳しい。
なだらかな山道を歩くと、鳥の声以外はほとんど無音である。すれ違う人も少なかった。
降り注ぐ強い日差しが、山全体を静かに押さえている。動物たちが息をひそめている空気が感じられた。

坂道の上の方で、木立の方向をみて目を凝らしている初老の男性がいた。オーストラリア人のようだった。
私たちが近づくと、遠くの木を指さして、
「あそこにコアラがいるよ」
と教えてくれた。しばらくはどこにいるかわからなかった。指先の方向を丹念にみていくと、いた。
左右に分かれた幹の股に、コアラが座っている。
じっと座っているので、周りの風景に完全にとけ込み、よほど注意しないと見えない。でも、ときおり首を回したり、頭を掻いてる。

そこからさらに進むと、平坦な道になる。鳥の声もなく、風も吹いていない。音と言えば、私たちが歩く足音だけだ。
そのとき、ガサガサッという音がした。音の方向を見ると、コアラが地面を歩いている。やや慌てた様子だった。大きなユーカリの木に素早く登り、木の幹の分かれ目に座る。ほんの2−30秒のことである。
そういえば、コアラは木の間を移動するときがもっとも外敵に狙われやすい、と聞いたことがある。

自然保護区の山の頂上付近に、見晴らしのいい場所があった。
大きな岩があり、そこに登ると島全体を見下ろせる。遠くには紺碧の海が見える。
そういう観光客が立ち寄りそうな場所のすぐそばの木に、コアラの親子がいた。だれかが示してくれなければ、居場所はわからなかったかもしれない。先に到着していた若いカップルが、教えてくれた。

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左が母コアラ(顔は隠れているので見えない)、右に子供がいる。

動物のことをよく知っているつもりになってはいけない。今回ほど、そう思ったことはなかった。
周りにある自然、大気、音、それらのものが動物の棲む環境を作っている。特にコアラのような動物は、環境と一体になっている生き物である。


自然界から離れた状態で見聞きするイメージとは全くちがう、自然の中の生物、あるいは自然そのもの。
それは、その場所に自分が身をおくことで、はじめて理解できるのではないか。
これは、本当に新鮮な体験だった。

 

 

 

 

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