はりねずみ通信

2015.04.08

山椒魚

井伏鱒二の「山椒魚」という短編は学校の教材でも使われることが多く、知っている方もいるだろう。
山椒魚が岩屋の中に棲んでいるうち、体が大きくなり、外へ出られなくなり狼狽する話だ。
その中に、メダカの話があることが、日経新聞のコラムで取り上げられていた。短編集を本棚から久しぶりに取り出して見てみると、こんな話である。

岩屋から出られなくなった山椒魚が、川を自由に泳ぎ回るメダカを岩の隙間から見ている。
メダカは群れを成し、よろめきながら川の流れに逆らって泳いでいる。かならず集団を作ろうとするので、一匹がよろめけば、他のメダカもそれにつられ、よろめく。一人では行動できない不自由さを、山椒魚は嘲笑してこう言う。
「なんという不自由千万なやつらであろう!」

似た話が身近にあった。
私の叔母(隣に住んでいる)は、長年鋳物工場を営んでいたが、数年前に廃業した。とても元気な叔母だったが、寄る年波で最近は寝たきりである。その叔母が、通りを歩いている年配の婦人を見て、こう言ったのだそうだ。
「あの人はふらふら歩いて、たよりないね!」

表に出ることが少なくなり、叔母には最近ほとんど会っていない。でも、口が達者であることがわかり、元気であると知る。

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おきもの

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