はりねずみ通信

2016.03.10

助手の役割

手術には助手の存在がとても重要である。
助手とは、狭い意味では手伝ってくれるもう一人の人。広い意味では、自分の左手だったり、手術の場を展開するレトラクター(傷を広げて固定する器具)などである。

術者の役割は意外に単純だ。切って縫う。ただそれだけである。
手術の構成を子細に分割してみると、メスで切る、剥離する、という分離する動作「切る」と、切ったところからの出血を止める、元通り縫い合わせる、という動作「縫う」に集約される。これには技術が必要であるが、本当はそれほど難しくはない。
ある医療ドラマで、女優さんが糸結びのシーンを見事に行っていた。合成ではないと思うので、おそらく役作りのため練習されたのであろう。こういう動作は、一定の練習でできるようになる。

私は相当長い期間(おそらく10年以上)、ひとりで手術を行ってきた。
動物病院に人手が少なかったことと、夜に手術することが多かったからである。
そのため、広義の助手(左手や器具)に頼ってきた。

ところが、10年ほど前から内視鏡外科に携わるようになり、だれかと一緒に手術することが増えた。それでわかったことは、助手の重要性である。
自分がして欲しいことを、人にしてもらう。
これは非常にストレスがかかることだ。
組織を少し牽引してもらう。その「少し」のニュアンスが伝わりにくい。(背中をだれかに掻いてもらうのを想像すると、理解いただけるかも・・)
昨日も体重2キロの犬の腹腔鏡の胆嚢摘出を行ったとき、助手にうまく伝えられなくて苦心した。

それで、ふと考えたのは、将来自分が助手として働いていく、ということである。
解剖を理解し、場を展開する能力は、一朝一夕には培われない。名助手として名を馳せれば、どこからも引っ張りだこになり、歳をとっても存在価値を残せるのでは。

想像は膨らんだが、そのまえにやるべきことはたくさんある。
老後を考えている場合ではなかった・・。

IMG_7929
はるをまつ

 

 

 

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