はりねずみ通信

2018.05.10

LCについて

先日、世界で一番犬のLC(腹腔鏡下胆嚢摘出)を行っていると書いた。
でも決して自分が世界一などと思ったことはない。
どういった立ち位置で行っているかを少し書きたい。

人の医療では30年ほど前にLCが行われるようになり、いまは85%がLCで行われている。
動物医療では10年ほど前から取り組みが始まっているが、ほとんど普及していない。
理由は、技術的に難しいから。端的に言うと、そうである。

もともと開腹手術で胆嚢摘出を行った場合の周術期死亡率が、(文献にもよるが)10%程度といわれている。
動物の胆管系が繊細であり、かつ構造上のさまざまなバリエーションが存在する。それが手術を難しくしている。
開腹手術でも難しいのに、それを腹腔鏡で行うのは、障壁が大きい。そのため普及が遅れていた。

米国やカナダを中心に犬のLCの取り組みがなされているが、文献上は「重症でない20例」の報告が最大である。
それでもやはり難しく、20例のうち3割が開腹移行している。

私が犬のLCを行いはじめたのが2008年。ちょうど米国で取り組みが始まったのと同時期である。
当初は手術成績は開腹手術とほぼ同等であったが、やはり非常に難しさを感じていた。
そこで、2013年から3名の獣医師で研究会を立ち上げ、人医を招いて手術法を検討してきた。

わかったことは、人間に比べ動物のLCは非常に難易度が高いということ。
人と同じ手法で行うことには限界があった。
そこで、人で行われている方法を基準に、動物固有の手法を確立してきた。

今度リスボンで発表するのは、2016年までに行った76例をまとめたもの(現在までは112例の実績がある)。
内容は、動物のLCに対し、私たちが重要と考える3つのポイントを紹介することと、その治療成績である。
(まだまだ改良の余地があり、自分では道半ばと思っている)

がんばってやりたい理由は、自慢をしたいからではない。
正しい方法論で行えば、死亡率が高いといわれている胆嚢摘出術の治癒率をLCにより改善できる、ということを伝えたいからである。

ちゃんと伝わらないと、ほんとうにマズイ。
・・なので、追い込まれているのだ。

IMG_8149
バラとオオデマリ

 

 

1件のコメント

  • こんにちは(*^^*)
    LCだけではなく、先生が今まで低侵襲治療で救われた命の全てが、応援し、サポートしてくれるはずです!
    素晴らしいものになさってくださいね!
    いえ、きっとなります d(^_^o)

    今日はノームのシャンプーとテリーの健康診断等、お世話になりました。
    少ーしふくよか(オブラート二枚重ね 笑)なトコ以外はすこぶる健康優良児とのお墨付きをいただきました。
    ありがとうございました(*^^*)

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