はりねずみ通信

2016.05.20

課題の分離

アドラーの心理学のつづき。
アドラーの心理学に「課題の分離」という考え方が出てくる。
物事に対処するとき、「それは誰の課題であるか」を考える、ということである。

たとえば、子供が勉強しなくて成績が悪いとする。
親は「勉強しなさい」ということが多いだろう。理由ははっきりしている。勉強しないと、子供が将来苦労をする。そのために、(いまは憎まれても)勉強をさせようとする。
嫌がっていても、将来親が言っていたことのありがたさをわかってくれるはず。そう思い、心を鬼にして言うのである。

ところが、アドラーはこう言う。
勉強をするかどうかは、子供の課題で、親の課題ではない。だから、強要してはいけない。

これは、ちょっとした「考え方の変化」に思える。
ところが、日常のすべてにおいて「課題の分離」をもとに対人関係を築いていくと、世界が一転するほどの違いが現れる。それがアドラーの考え方である。

ところが、アドラーの心理学は、考え方は理解しやすいが、実践はとてもむずかしい。
課題の分離も、できそうでできない。
この教育の話も、それで問題が解決すれば、誰もが苦労しないだろう。放っておけば、子供は勉強せず、先々苦労するのは目に見えている。
実践には鍛錬が必要とも思う。

課題の分離をするにはどうするか。他の例を出そう。
相手が自分に受け入れられないようなひどいことを言う。このようなとき、冷静に対処することは、なかなかむずかしい。
相手のおかしい部分を理詰めで反論したり、こちらもひどいことを言って仕返ししたりする(しませんか?)

そのとき、「相手がひどいことを言うのは、相手の課題であり、自分の課題ではない」と考えるのがアドラーの教えである。
相手は、何か理由があってそう言っている。たとえば、お腹がすいて機嫌が悪かった、とか、過去に同じような経験をしていて、それが蘇って気にさわった、とか。でも、それは相手の心の中のことで、自分には踏み込めないことである。
自分に扱えることは、自分の課題だけである。そう考えることで、「相手も何か思うところがあるのだろう」と客観視できる。

子供の教育にもどると、「勉強しなくて困るのは、子供自身である」と考える。
親はたとえ小さな子供であっても、子供の課題に土足で踏み込むことはできない。子供には勉強しない何かがあるかもしれないが、それは究極的にはわからないのである。

では、放っておいていいのか。
親が子供にできることは、子供に前に進む勇気を与えること。それだけである、とアドラーは説く。

私は子供がいないので、実際に子育てをしている方の苦労はわからないが、「理屈はわかるけど・・」と言われるかも。

私も課題の分離ができているとは、とても言えない。
でも、この教えの中に何か真理がある、という直感があり、日々実践しようと思っている。

 

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ちいさなクモをみつける

2件のコメント

  • 嫌われる勇気!   買ってしまいました。
    開いて見ましたが 今年中に読めるか…(-_-)
    開いては 寝てしまいそうです。
    でも 先生のコメントを見ているといろいろ勉強になるみたいな気がして…

     頑張ります(^-^)

    • がくさん、買って下さったんですね!ゆっくり読んで下さいね。いろいろな気づきがあると思います。

  • 先生こんばんは~私は息子二人有りますが小さい時から勉強しなさい!!と言う言葉は言った事がありません。でも今から勉強してないと困るのは自分自身やで!!特に男の子は!とは言った記憶はあります。小学2.3年頃に少年野球チームに入りたいと言い出し親としては当番とか土日朝早くから試合とか大変だから本音はやめて欲しいと思いました。でも子供がやりたい事を親が止める権利もないですよね!?息子にやりたいならやりなさい!!その代わりどんなつらいことがあっても止めると言わないように!!と釘をさしさせました。親としても大変でしたが長男は行きたい会社に就職も決まり次男が西高の時には東洋に勝て嬉しかったものです。今思えば色々な大変があったからこその今があるのだとおもいます。先生の今日のお話で苦労が楽しかったんだと教訓しました。ありがとうございます。ながながと申し訳ありません。近々サプリ頂きにいきます。

    • 黒田さま、ふたりの息子さんを育てることは本当にたいへんだったと思います。
      自分のことは自分で決める、という教育方針がよかったのでしょうね。信頼してそうすることは、本当はとてもむずかしいことだった、と想像します。

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