はりねずみ通信

2017.07.14

老婆心

外科手術は技術ではない。もっと大切なものは、病態の把握だったり、解剖の知識だったり、メンタルである。
と、歳を経るごとにそういう思いは強くなるが、技術も大切である。

プロのピアニストが、
「音楽はやっぱりハートです」
と言ったとしても、信じてはいけない。彼らは死ぬほど練習しているのである。そうでなければ、リサイタルですべての曲を暗譜で弾けるはずがない(試しに、手元にある本の10ページを、一字一句間違えずに暗唱しなさいと言われたら準備なしにできないはず。いくら天才でも無理だろう)。

ところが、外科手術は「経験して覚える」というように考えている人が非常に多い。
自分自身がそうだったので、決して偉そうなことは言えないが、それでは音楽家が練習せずに本番に臨むようなものである。

だから、獣医師の若手教育に、どう練習を取り入れるかが重要だと思っている。
そこで、トレーニングボックスや練習用顕微鏡で手技の練習を指南するのだが、若い人からはこんな答えが返ってくることが多い。
「私はまだまだ色々な分野を全般的に学んでいかなければならないので、腹腔鏡や顕微鏡手術はもうちょっとしてからお願いします」

まんべんなく学ぶのは、何も学ばないのと同じである。
若いときからこういう訓練を続けたら、どんなに素晴らしいか。思い通りに動く手を持てるようになることが、どれほど大切か・・。

ああ、こういうのって老婆心というのですね。

IMG_0589
それぞれのもくてき

1件のコメント

  • こんにちは(^^)
    先生の老婆心と私の老婆心は分野レベルが全く違いますが公園で散歩中、子供を遊ばせてる若いママさんとたまに話ししますが私の意見はよくひっくり返されます。
    気持ちも解るが年月が過ぎればこうなるよと、経験から話していますが‥
    老婆親切ですね。

    昨日のハリネズミ通信とても興味深く拝見しました。
    胆嚢、副腎が目に飛び込んできて。
    胆泥症その先にあるもの
    先生方の研究会とても有難く思っています。
    その先生にうちのワンコたちが診てもらって心強いです。

    心配性でやっかいな飼い主ですがよろしくお願いします。
    ハランは食べています。消化の良いようにフードはふやかし細かくして、あとかぼちゃ、にんじん、キャベツ、ササミなどは蒸して水分をたしてあげています。

    暑いので気をつけてください!

    • もあの母さん、ありがとうございます。若い人のことを「もっとこうすればいいのに」と思うのは、「自分はこうすればよかった」の裏返しですね。時が来ればわかるでしょう(^^)
      ハランちゃん、食欲あるようでよかったです。
      暑い夏を元気に乗り越えましょう!

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