はりねずみ通信

2016.02.17

病気の理解

動物が病気になったとき、飼い主さんは色々な面でとてもたいへんである。
定期的な通院、薬の投薬、急変した場合の心配・・。
手術を受けることになると、さらにさまざまな心配が増える。麻酔は大丈夫か、手術のリスクは、術後はどうやって看ていけばいいのか。費用の問題もある。

そのときに、病気の理解がきちんとできていると、目標を持って取り組むことができる。
だから、私たち獣医師は、飼い主さんが心から腑に落ちるような説明をしなければならない。

先日、椎間板ヘルニアを疑う犬の診察をした。
飼い主さんはこう言う。
「人間のヘルニアは、いまはほとんど手術しないって聞いたのに、どうして手術が必要なんですか?」
私は訊いてみた。
人間の腰ってどこだとおもいますか?
「・・この辺かな?」
飼い主さんは骨盤の上あたりに手を当てる。
上半身を回すと、一番回る部分が人間の腰である。ヒトはその部位で椎間板ヘルニアが好発するが、そこは脊髄神経の一番うしろの馬尾(ばび、馬の尻尾の先端のようなのでそう呼ばれる)である。その場所がヘルニアで圧迫されても、歩けなくなるような強い痺(しび)れは起きにくい。

ところが犬でヘルニアが起こる場所は、もっと上(頭側)である。
「犬の体をよく見てください。前足と後ろ足のあいだに背骨が橋のようにかかっていますよね」(とくに胴長の犬種ではわかりやすい)
「ほお、確かに」
「一番力がかかっている場所は、どこでしょう?」
「背骨の真ん中!」
そうなのだ。背中の中央の脊髄神経が一番太い場所でヘルニアが発生するので、重症になるのである。

手術予定を決めて帰り際、その飼い主さんは言った。
「なるほどなー。橋の真ん中は力がかかるからなあ」

きっときちんと治療してくださると思う。

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にんきのばしょ

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