はりねずみ通信

2018.07.19

正しさについて

化学療法(抗がん剤)を自分や自分の家族にも使うかどうか。
がん治療に携わる医師や医療従事者にアンケート調査をすると、25%の人が消極的だった、という記事をみた。

「自分が躊躇するような治療を、ひとに施すのか」という批判があるのは当然ではあるが、こういったことはあり得る、とも思う。
なぜなら医療を施す側は、「医学的根拠に基づき正しい治療をしなければならない」という大前提があるからである。

ある治療をするとき、なんとなくよさそうだ、とか、自分の経験からだとこうだよね、と考えてはいけない。
それを選択する理由を、エビデンス(科学的根拠)をもとに説明できなければならない。
過去の文献で、この薬を使うと、何パーセントの人が治り、副作用はこれくらいだった。だから、この治療にはこの薬をつかうんですよ。そう説明することが医師としての責務である、と教育される。

だから、医師は患者の前に立つとき、「正しく振る舞わなければならない」というプレッシャーにさらされている。
エビデンスは絶対に揺るがすことのできない正義なので、そう振る舞わざるを得ないのだ。

ところが、実際に自分や自分の家族が病気になったとき、立場は逆転する。
「施す側」が「施される側」に変化する。
そのときは、患者になるわけなので、主客転倒するわけである。
患者の立場で考えれば、正しいか正しくないかは関係ない。そのひとの人格、環境、文化や哲学などによって治療を選ぶことになる。
「患者に処方する抗がん剤を、自分や家族には処方しないのか」という意見は、ひとりの人間のなかで矛盾があるんじゃないか、との指摘なのかと思う。

でも・・。
同じ人間でも、立場が変われば意見も変わる。そういうことは、よくあることだ。

私が言いたいことは、医師や獣医師は、こういった正しさをもとに仕事をしなければならない職種であるので、患者さんはそれを理解していたほうがいい、ということ。

医学的に正しいことと、自分がどの治療を受けたいかということは別なので、医者が勧めたからといってその治療を受けなければならない法はない。

あくまでも「医師の意見をもとに、自分で選択する」という立ち位置であってほしい、と願う。

(たまに、「先生なら自分の犬や猫にこの治療を行いますか?」と質問される。もちろん真面目に答えるが、一番むずかしい質問、である)

 

IMG_8445
ここはねるところ?

 

 

 

1件のコメント

  • ご無沙汰しております。
    実は、前十字靭帯の手術から今日でちょうど一年が経過しました。
    http://bambi-clara.com/blog-entry-628.html
    その節は、本当にありがとうございました!!
    おかげさまで、バンビもクララも元気に過ごせています。
    治療の選択は本当に難しいです。
    私も昨年「先生なら自分の犬や猫にこの治療を行いますか?」と
    お聞きしたいと思いましたが、結局そんな心の余裕もないままで(^^;

    それと、トネリコが冬の寒さで全て落葉してしまいました。
    また少しずつ元気になってきたので嬉しいです(*^^*)

    • バンビママさん、連絡ありがとうございます。1年経ったのですね。
      手術の時、悩まれたかと思います。とても勇気があったと思いますよ(^^)
      でも、この決断が今後「効いて」きます。勇気をたたえたいと思います。

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