はりねずみ通信

2015.06.02

才能ということ

多くの人が自分には才能がない、と簡単に言ってしまう。
少しやってみて、うまくいかなかったら「自分には向いていない」と思ってしまう。
本当にそうだろうか?

先週のトライやるウィークで、子どもたちに腹腔鏡の練習をさせてみた。
トレーニングボックスで、モニターを見ながら結紮縫合をするのが左右の手の協調を学ぶのにいいので、腹腔鏡手術を行う前に取り組まなければいけないタスクである。
中学生には難しいので、まず針をゴム版に刺し、それを抜く作業をさせてみた。
時間はかかったが、だいたい皆、うまくいった。簡単そうにやっていることが、いかに難しいかを知ってもらいたかったのである。
そのあとで私が言ったのは、こういうことだ。

みんな、今やったことが難しいってわかったよね。
すぐできたひとも、そうでない人もいたけど、それはたいしたことじゃないよ。
逆にすぐできたひとは、「簡単にできた」と思い込んでしまって、練習しなくなる。うまくできなかったひとのほうが、これから伸びることが多いんだよ。

大人の世界では、結果を見て「あの人は才能があったから、できるようになった」と簡単に言う。
ところが、人間の才能にそれほど大きな差があるとは思えない(天才と呼べる特殊な絵画や音楽の才能は別かもしれないが)。
違いは、その技術を突き詰めなければならない切羽詰まった状況だったり、それをマスターする強い欲求があるかどうか、ではないだろうか。

幻冬舎社長の見城徹さんの「たった一人の熱狂」(双葉社)を読むと、こんなことが書いてあった。
「ぼくはかつて作家を目指したことがあるが、挫折した。作家は文章を書かなければ救われない、内面にマグマを持った人たちである。編集者の仕事をしていて彼らのことを深く知ると、自分はとても本当の表現者になれないと自覚したのだ」

文章を書く、ということは誰でもできる。練習すればうわべだけの美しい文章は書けるようになるかもしれない。
でも、本当の作家として圧倒的な仕事を残すとすれば、「書くことでしか生きていけない」「自分を救うにはそれしかない」というほどの、強い衝動がなければならない。

簡単に「才能がないから」という前に、自らにそれを成し遂げたいという強烈なエネルギーがあるかどうか。
そういったことを、ぼんやりとでも子どもたちに伝えられたら、と思う。

昨日から、増位中のトライやるがスタートした。また、様子を書きたい。

 

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あれ?背中に毛がない犬がいる

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ラズベリー発見!

1件のコメント

  • こんにちは。懐かしいです。トライやるウイーク。うちの子供も何年か前に事業所にお世話になりました。先生は、お忙しいのに何校もの中学生のトライやるウイークの受け入れ先になっているの凄いです。何人もの生徒さんが来るので気を使われたりして大変なことだと思います。動物病院でのトライやるの希望者は本当に、動物が好きとか医療に興味関心がある子たちが希望してきているのではないかと思います。進路を考えて,行ってみようと思う子もいるので先生のお話を聴いたり、スタッフの方々に仕事を教えて頂いて見たり聞いたりすることは子供たちにとって本当にいい経験ですね。何年後かに獣医さん、お医者さんになりましたと言ってくる子が先生の所に来るかもしれませんね。!(^^)!

    • まきあさん、いま見学に来ている獣医の学生は、トライやるウィークで動物病院へ行ったそうです。わたしはこの企画がはじまって以来、ずっと協力してきたので、当時の中学生が社会へ出てきていることに感無量です(^^)

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