はりねずみ通信

2015.12.22

プレゼンテーションとは?

先日、人の内視鏡外科学会に行ったとき、医学書のコーナーでこんな本を見つけた。
医療者・研究者を動かすインセンティブプレゼンテーション(杉本真樹著、KADOKAWA出版)http://www.amazon.co.jp/dp/4048862189

私は学会発表をするとき、自分の発表はこれでいいのかとずっと疑問に思っていた。
その答えを探していたので、この本を手にしたのだと思う。
まったくの偶然なのだが、この本を買ったあと、その30分後に私はこの著者に出会った。
内視鏡外科学会の医工連携(医師と工学系の会社がコラボし、新しい器具などを開発する企画)ブースツアーを申し込んで参加していたとき、そのツアーコンダクターをしていたのが杉本先生だったのである。
家に帰って本を読んでいたら、本に出てくる人物とツアコンのお医者さんがどうも似ている。
よく調べると同一人物だったので、びっくりした。

この本によれば、プレゼンテーションは人の心を動かすものでなければならない。
よく学会発表で、これ見よがしに自分の技術をひけらかしたり、難しいデータを次々に出して「こんな難しいことに取り組んでいる」と自慢するようなものを見かける。また、そういう気持ちはなくても、情報が盛りだくさんで結局何が言いたいのかよくわからないものも多い。私の発表も、それに近かった。
短い時間で人に伝える。それがプレゼンテーションである。
7−8分の時間の中で、多くの情報を詰め込むと、聴く人が理解不能になってしまう。

本に書かれていたことはどれも目からウロコのことばかりであったが、一つ紹介すると、話す順番がとても大切であることが強調されていた。
普通は、まず、
「こんな病気があります」
そして、
「私たちは、こんな検査をし、こんな結果を得ました」
最後に、
「そのことから、こんなことがわかりました」
という順番である。
これは、論文を書くとき「はじめに」「材料と方法」「結果」「考察」という順で書くからそれに準じているのであろう。

ところが、短い時間で人に伝えるというプレゼンテーションの目的からいうと、この順番ではうまく伝わらない。人間はストーリーを求める生き物である。心を動かすには、発表者が「なぜ」その研究に取り組んだかを最初に示さなければならない。

たとえば、
カレーにはインドカレーやスープカレーなどいろいろな種類があります。
具材やスパイスで分類していくと、このような表になりました。
そのことから、カレーにはさまざまな地域性や歴史があることがわかりました。
と発表しても、心には響かない。

先日友だちの勧めでスープカレーを食べたんだけど、びっくりするほどおいしかったんだよ。
それでいろいろ調べてみたら、カレーっていろんな種類があるんだね。
そしたら、スープカレーが作られるまでのいきさつがわかって興味深かったよ!

後者を聞くと、聞き手もインスパイアされて、「自分もオリジナルカレーを作ろうかな?」と思うかもしれない。そういう聴衆を動かすものを「プレゼント」する。それがプレゼンテーションなのである。

私は、今回の北海道の学会で、腹腔鏡下胆嚢摘出術のスライドを全部書き換え、「なぜ」からはじめることにした。(実は、10月の近畿三学会でスライドの動画がフリーズして散々だったので、今回はリベンジなのだ)
私の発表が、それを聴く人の心を動かし、家に帰ったあとも「今日こんな発表を聞いてね・・」と人に伝えたくなるものになるように。前日まで集中して取り組んだ。

実際は私の想いがどこまで伝わったのかはわからない。
ただ、よい質問がたくさん出て、いい感じに終われたので、実りを感じることはできた。
がんばって、北海道へ行ってよかった。

 

IMG_7533
あたたかいところで

1件のコメント

  • ご紹介ありがとうございます、早速実践頂いたその行動力が素晴らしいです。ぜひ今度はプレゼンセミナーにもお越しください。

    • 杉本先生、直接コメントいただけるなんて感激です!
      プレゼンセミナー、是非行きたいです!!ありがとうございました。

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