はりねずみ通信

2017.02.04

よりよく生きる2

人間と同様、動物も高齢化が進んでいる。
色々な病気を克服することができると、長生きするのは人間と同じである。すると、さまざまな問題が生じてくる。
高齢期の動物に行う治療には、舵取りの難しい点が多くある。
何らかの手術が必要なときは、それをすることのメリットとデメリットを十分考慮しなければならない。
残りの寿命と兼ね合い、高齢期の麻酔のリスク、外科侵襲に対する体力の有無・・、いろいろな問題が立ちはだかる。

Uさんの猫、チャーリーは、肛門周囲に切除できないほどの腫瘍ができた。そのため、排便困難を起こして来院されたのだった。内科的治療で、かろうじて排便の問題は改善したが、腫瘍が進行し、ついには尿が出なくなった。腫瘍が尿道を塞いでしまったのである。
カテーテルも入らない状態になったため、尿路をどう確保するか。Uさんと相談して、膀胱皮膚瘻を作ることにした(医学的にはいろいろなアプローチがあると思うが、Uさんの介護がしやすい方法を選択した)。

その結果、排尿の問題は解決され、チャーリーは寿命の最後を落ちついて過ごすことができた。
数日前に亡くなったのだが、Uさんは「チャーリーが排尿困難の苦しさを回避でき、穏やかな最期を迎えられた」と喜んでおられた。

病気を治す、という観点からはベストとは言えないかもしれないが、よりよく過ごす選択肢はある。
どれだけ低侵襲に治療できるか、麻酔のリスクを最小限にできるか、さまざまな治療法の習得など、終わりのない課題であるが、どんな場合でも最後まで最良の選択ができるようにしたいと思っている。

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たいら

 

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