はりねずみ通信

2017.09.26

どう教えるか?

自転車に乗る乗り方を、はじめて乗る人に教えるとする。
自分は長年自転車を使っていて、上手に乗ることができる。では、初心者にうまく教えることができるか。
答えは、ノーである。
「だって、最初は体で覚えたし、だいいちそんな昔のこと覚えていない・・」
というのが、臨床経験をある程度積んだ獣医師が、新人獣医師に診断を教えるときの「感覚」ではないか。

「吐いたり下痢をしていて、右後ろ足をかばって歩いています。他の動物病院で治療していたのですが改善がないんです」
「最近ふらふら歩くんです。でも、元気はあります。そういえば、こんなところにできものがあって」
というように、日常に遭遇する動物たちのイベントは複雑である。
なにが主たる問題なのか、それぞれの症状には関連があるか、それを解き明かすためにどんな追加質問をすればいいか。
新人獣医師は戸惑うはず(私は何年もとまどった)。

ところが、いまは診断学のよい参考書がでてきて、新人にベテランにもよい時代になった。
新人にとっては、こんがらがった頭を整理するため。
ベテランには、どう教えるのかの指針を得るため。

臨床経験が長いと、意外に「なぜその診断にたどり着いたか?」が論理的に説明できないことがある。
それは、問診を取り、動物の身体検査をするあいだに、「絶対この病気ではないだろう」と思われる疾患を高速に除外するからである。それが意識にすら上らないことも多い。
だから、「新人の人が悩んでいる意味がよく飲み込めない」という事態が生じる。結果、うまく教えられない。

私が診断学を学んだとき、一番おもしろかったのは、
「ああ、自分はこう考えていたんだ」
と、頭の中が整理されたことである。それから教えることに少し道筋ができた(ような気がする)。

診断学に関心があり、先日のJBVP(日本臨床獣医学フォーラム)で行われた「プロブレムソルビング(診断推論)」の実習に参加したのだが、参加者はほとんど臨床経験が数年以内の若い獣医師だった(というか、最初から若者向けプログラムなのだ)。
高齢者(?)もオブザーバー参加OKとのことだったが、参加したのは私だけ。
これは教える側の人に是非見てほしい内容だった。

来年は「教える人のためのプロブレムソルビング」を、是非行ってほしい。

IMG_7006

IMG_7005

 

1件のコメント

  • 【誰も教えてくれなかった診断学―患者の言葉から診断仮説をどう作るか】

    名医の思考過程を「カード」と「3つの軸」で解き明かす

    ベテラン医師は、そもそもどのように診断をつけているか?
    それは初期研修医とどのように違うのか?
    本書はまだ十分な臨床経験を積んでいない医師を対象として、「カード」を想定した鑑別診断法を切り口に、
    「頻度・確率」、「時間」、「アウトカム」の3つの軸を意識しながら下す、これまで”誰も教えてくれなかった”診断法を伝授する。

    ーーー

    興味がありましたのでAmazonで調べてみましたが、、、
    理解出来そうにないですね(^_^;)

    先生がいてくださるから〜と言い訳し、そっとページを閉じました(笑)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

最近のコメント

2023年
2020年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年