はりねずみ通信

2017.03.30

頼れるひと

昨日は、小さなトイ・プードルの腹腔鏡下胆嚢摘出があった。
トイ・プードルでも特別に体格が小さく、体重は1.2kgしかない。胆嚢内に結石が多数存在していて、腹部の痛みによりぐったりしていた。比較的緊急性があったので、急遽予定を入れたのだが、ひとつ問題があった。

腹腔鏡下胆嚢摘出は、術者だけでなく助手、カメラ係、器具出し、外回り、麻酔係がいる。
メンバーはほぼ固定していて、同じ顔ぶれで取り組んでいるが、いつも外回りを担当する獣医師の藤居が1週間休みで不在なのだった。外回りの仕事は地味だが、造影が必要になったときレントゲン透視装置を操作したり、追加の器具が必要になったときに大切な存在である。私は、他のスタッフに代役を頼もうと思ったが、勤務医の林が賛同しなかった。
「藤居先生を呼びましょう」

私はLINEで藤居に連絡した。ほどなく返信があり、来てくれるという。
1週間休みは、スタッフ皆が有給休暇とは別にまとまった休みが取れるように設定している。昨日は、藤居の最後の1日だったから、何か予定が入っていたかもしれない。小さな子供3人の母なので、子供の世話の段取りなどもあったはず。ところが、
「来ました」
といってやってきた藤居は、何か特別な感じが全くせず、拍子抜けするくらい普通の佇(たたず)まいである。
それがかえって安心感を与えてくれた。

癒着も強く、非常に難しい手術になったが、無事終わった。
心臓弁膜症の基礎疾患もあったが、安定した麻酔で覚醒も速やかだった。

「じゃあ、私帰ります」
と、藤居はいつもと同じように帰って行った。
獣医師としては当たり前の行為かもしれないが、こういう人を「すごい人」と言うのかもしれない。
ほんとうにありがとう。

 

IMG_0115
なかのわるいふたりがひざのうえ

 

1件のコメント

  • 先生こんにちは。

    我が家の末娘に先月していただいた
    腹腔鏡下胆嚢摘出手術の大変な事
    先生方、看護師の方6人で、改めて
    ありがとうございました。
    お陰さまで、先日血液検査でも異常なしで、食欲もあり元気にしています。
    日常何気ない普通が凄くありがたく感じます。
    今、兄犬で気持ちがいっぱいいっぱいですが他の二頭も気をつけてあげます。

    • もあの母さん、手術の時はいろいろ心配されたかと思いますが、頑張って治療してよかったですね。
      いまは、大変なときですが、気持ちをしっかりもってくださいね。

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