はりねずみ通信

雑誌掲載

MVM(ファームプレス社が発行する獣医師の雑誌)に、私たちの研究会の特集が掲載された。3月の腹腔鏡下胆嚢摘出(Lap-C)に続き、今回は「副腎」である。

この見所(みどころ)について書きたい。
我々の研究会(SAMIT、小動物低侵襲治療研究会)は獣医師4名、医師1名で行っており、発足当初から腹腔鏡下胆嚢摘出術をメインに隔月で研究会を行ってきた。その際、胆嚢だけでなくそれ以外の腹腔鏡外科のビデオも持ち寄り症例検討を行うこともあったのだが、メンバーの一人の糠谷(ぬかや)は、副腎腫瘍のビデオをよく持ってきていた(なぜか、彼の動物病院では、副腎疾患が多いのである)。
SAMITの目的は、Lap-Cの術式を定型化し、これからはじめる人が安全に手術を行えるようすることである。Lap-Cの教科書を作ることを最終目標にしている。その前段階として、雑誌掲載に望んだのが、前回の「胆嚢編」だった。
胆嚢以外にも、腹腔鏡手術の魅力を多くの人に伝える術式はあるか。
いくつかの案はあったが、糠谷が懸命に取り組んでいた「副腎」に決定した。

ところが、実際に雑誌掲載を考えていくと、副腎の場合には、参考になる局所解剖のテキストがほとんどないことがわかった。
それでは術式として示すことができないため、SAMIT全員で、糠谷の手術のビデオをもう一度見直すことにした。

私は、「あの日」のことを忘れられない。
名古屋の貸し会議室で、SAMITメンバーでビデオ検討会をしていたときのこと。糠谷のビデオを皆で見ていると、医師の萩原先生(日本大学医学部)が、副腎周囲の膜の解剖(これが、核心部なのだが、書き始めるとすごいボリュームになりそうなので、詳細は割愛する)を次々に指摘していったのである。
臓器は膜で隔てられている。その膜構造を理解し手術を行っていくと、「空気を切る」ように出血の少ない手術ができる。
人の医学、特に内視鏡外科で取り入れられているこの考え方に、萩原先生は熟知されていた。
「いま展開している部分は、この膜とこの膜の間です」
ワオ!と叫びたかった。これこそが、腹腔鏡外科の真髄なのではないか。

糠谷は(みかけは剛胆に見えるが)実は非常に用心深い性格である。
彼は副腎を非常に愛護的に扱い、出血をさせないように時間をかけて手術を進めていく。小さな血管もひとつひとつ確認しながら進めていくので、ビデオをあとから見ても(時間はかかっていても)血管解剖が明確に認識できる。彼は、いわば動物的勘で(と言っては失礼か・・)それを行っていたが、その画像に萩原先生が明確な理論的意味づけをされたのだ。

これを機に、副腎編のコンセプトは定まり、おそるべき展開になっていった。
雑誌を手に取るとわかるはずだが、副腎の局所解剖をこれほど明瞭に記載した文献・書籍は過去にひとつもないはず。
糠谷と萩原先生が、すべてのビデオを見直し、犬の血管解剖を徹底的に調べ上げて作った渾身の記事なのである。

先日、私は糠谷の病院へ行き、こう言った。
「あの記事は、いまは理解できる人が少なくても、10年後の獣医師に感謝されるよ。10年前に、こんなすごい仕事をした人が居たって!」
これは本心である。






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