はりねずみ通信

2016.07.05

身体の誤解

自分の耳はどこに付いているか。
多くの人は、頭の後ろ側に付いていると思っているだろう。ところが、答えは「まんなか」なのである。
そのように、自分の脳は身体を誤解して把握してることがある。

武術家の甲野善紀(こうのよしのり)さんが、興味深いことを言っていた。
「座っている人に、手をさしのべて引き上げてみなさい。なかなか力がいりますよね。では、次に手の指先を最大限まで曲げてやってみましょう」
実際に被験者がそうすると、座っている人がやすやすと持ち上がるのである。
「つまり、人間は手が器用なので、手先で何でもしようとするのです。そこで、指を曲げることで、手先が何もできないようにします。すると、腕や腰の力で引き上げることになり、うまくいくんです」
これも、脳が身体を誤解しているよい例であろう。

2本足であるく。
なんとなく、右足と左足が機械のように繰り出されるイメージである。
ところが実際は、股関節・膝関節・足根関節が3次元的に連動している。こういうことをものすごく意識してトレーニングしているのがイチロー選手であろう。
以前テレビでトレーニングマシンが紹介されていたが、ウエイトを腕で持ちあげるときに、肘や肩関節が複雑に動くような仕組みのものだった。

小型犬の膝蓋骨脱臼のとき、術中に関節鏡検査をしている。
膝関節の中には、前十字靱帯・後十字靱帯・内側/外側半月板・膝蓋骨などが配置されているが、しっかりした硬い部分とやわらかい部分、伸び縮みする場所、固定されるところと、ルーズなところなどが、神業のように(まさに神様が作ったとしか思えない)存在する。
これがとても精緻なバランスで機能しているのが、膝という「臓器」である。

それを「蝶つがい」のような機械的なイメージで理解していると、動物の身体を見間違うことになる。

人間や動物の身体をもっと理解したい。
それにはまず、脳のバイアスを取り除かなければならないだろう。

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そばに

 

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