はりねずみ通信

言葉の磁力

エコノミークラス症候群、という言葉がある。
医学用語でいうと「静脈血栓塞栓症」だが、飛行機などで長時間同じ姿勢を続けていると発症するから、こう呼ばれるようになった。
でも、厳密に言うとエコノミークラスを利用していなくても発症するし、さらには飛行機に乗らなくても起こり得る。

だから、エコノミークラス、という名称は混乱を招くのではないか。
医療関係のひとの多くは、多分そう思っているだろう。なぜなら、
「あなたの病気は、いわゆるエコノミークラス症候群ですよ」
というと、
「わたしは、飛行機なんか乗ったことがない」
「飛行機に乗るときは、いつもビジネスクラスだ」
などと、返答される可能性があるからだ。
それを説明しはじめると、ややこしい。いっそ最初から「静脈血栓塞栓症」と呼べば、話は簡単である。

ところが、そうならないのは、こエコノミークラス症候群という名称の「ピタリとはまった感じ」によるものだ。言葉の磁力は、いかに強いかという良い例である。
名前を聞くだけで病気のイメージが、瞬時に呼び起こされる。
「ああ、飛行機に乗っていてじっと座っていると、血の塊ができて詰まってしまう病気ね。エコノミークラスは席が狭いから、身動き取れないもんね」

こういう、言い得て妙、という病名は意外に少ない。
クッシング病、エバンス症候群、SLE、門脈体循環シャント・・。
名称を聞いただけだと、イメージがまったくわかない。

反対の例もある。
肥満細胞腫とは、肥満細胞が腫瘍化したものである。肥満細胞は、細胞の形が「まんまる」なので、そう呼ばれるようになった。だから犬が肥満していることとは無関係なのだが、この病気の話を始めると、
「うちの犬が太っているから、この病気になったのですか?」
と訊ねられる獣医師は、年間500人以上いるだろう。

この場合、病名が別のイメージに引っぱられてしまう、負の磁力、というべきか。

 

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へんなひと

 

 

「言葉の磁力」への4件のフィードバック

  1. 先生、こんばんは!
    今日は、ありがとうございました。。
    何だか・・仔犬が一匹増えただけで、一日が
    速足で過ぎて行きます。クタクタになります(*_*)

    先生ちょっと質問があります。
    蛙にも帰巣本能があるのでしょうか?
    うちの物干し竿の(下から一M位)洗濯挟みを入れてる籠の中に雨蛙が住み着いています。
    タオルで日陰を作ってあげて、朝晩と水をかけています。この間外へ飛び出したて、何処かに行ったので
    「どこかに行ったな」と思っていたら、朝戻って来ていました。。それから何度も飛び出しては、戻って来ています。。
    蛙のDNA の中に帰巣本能が組み込まれているのでしょうか?最近朝晩と籠を覗くのが楽しみになっています(^^)

    1. きなこさん、動物たちの関係が落ちつくまで、少し時間がかかります。根気強く見守って下さいね。
      蛙にも帰巣本能がありますよ。自分の安全な場所を覚えておかないと、危険ですので。
      でも、籠の中に毎回帰ってくるのは、かわいいですね。

  2. 肥満細胞腫•••「太い犬がなりやすいのか?」と別のイメージに引っ張られた一人です

    先生~わたくしスマホデビューいたしました
    スマホ自体が使いこなせてないのにLINEデビューまでいたしました
    後藤先生に指導していただかねば(笑)

    やっぱりガラケーのが良かったと今さら後悔してますが「はりねずみ通信」は見やすくなりました
    ガラケーだと過去ログが見れませんでしたが見れるしホームページも見れました(o´∀`)b

    1. 姥桜さん、ウェルカムバック(^^)
      スマホがいいとは限りませんが、見やすくなったのならよかったです!

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