はりねずみ通信

2015.03.25

獣医師に求められるもの

Kさんは飲食店を営んでいて、普段は忙しい。
お店のすぐ近くには高齢になるお母さんが住んでいて、そこでヨークシャテリアのSちゃんを飼っている。
そのSちゃんが、前十字靱帯断裂を断裂したため、先日手術を行った。手術後の経過は良好だったが、いろいろとたいへんだったらしい。Kさんは困惑した表情で、事情を話してくださった。

最近Kさんのお母さんは認知症が進んでいて、Sちゃんが手術を受けた事実を受け入れられなかったそうである。
足につけていたサポーターを、「かわいそうだ」と言って外してしまう。安静が必要なので、Kさんのお店で経過を見ていると、「いなくなってしまった」と近所を探し回る。太らせると関節に悪いので、食事の注意をしても、「欲しがるから」と言って何度でも与えてしまう・・。

私はアドバイスを求められたが、「Sちゃんはお店にいます」とか「朝ご飯はもうやりました」などの張り紙を貼るなどの工夫くらいで、たいした助言はできなかった。このような場合は、医療機関と家庭の間に、ソーシャルワーカーなどの専門家が必要なのかもしれない。

当のSちゃんはというと、「やっぱり母のことがいちばん好きなんです」とKさんは言った。
Kさんのお母さんも、認知症はあるけれど、Sちゃんのことをとても大切にしておられる。

人間と動物の関係を良好に保ちつつ、さまざまな状況の中で最適な状況を見つけていく。
そういったことも獣医師に求められるのだと思う。
やっぱり、動物について真っ先に相談するのは動物病院なので、社会の幅広い知識が必要だとあらためて感じたのだった。

IMG_6204
こんなところに

 

 

 

1件のコメント

  • 金井先生、今晩は。
    自分の知る範囲ですが、実行のしやすさから介護/医療現場では体操・お買物、音楽療法・カラーセラピーが一般的かと。動物セラピーは実際に遭遇したことがありません。動物さんと過ごす時間は本当に素晴らしいものです!
    Sちゃんにとっては、飼い主様が、どの様であろうとも同じなのですよね。私達人間は、どうしても同じ事を何回も言われると苛立ったり、予期せぬことに「なぜ?」と思ってしまったりします。きっとSちゃんは穏やか。
    余談ですが、日本動物高度医療センターというところが株式上場というのを知りました。御存知ですか?動物病院からの紹介のみ受付みたいです。かかりつけ医がない緊急の場合も受け付けて下さる病院が、とらは理想です。

    • とらさん、そうなんです!Sちゃんにとっては、「おばあちゃんはおばあちゃん」なんです。そういうところが、動物のすばらしいところだと思って、ちょっと胸が熱くなりました。
      日本動物高度医療センターは上場したんですね、それは知りませんでした。高額医療になるため、必ず動物病院からの紹介になるようですね。

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