はりねずみ通信

月を指さす

今回の学会で、私がいままで取り組んできた腹腔鏡下胆嚢摘出術の術式をまとめ、ポスター発表した。この手術法は、まだ確立されておらず、仲間と一緒に安全な術式を数年越しで検討してきた。多くの人に知ってもらうため、この度まとめて発表したのだった。

私は7−8年前から、ずっとこの学会でポスター発表してきたが、2年前からポスターアワードという賞が与えられるようになった。学会を盛り上げようという趣旨であろう。すると不思議なもので、「賞を得たい」という欲が出る。昨年発表した乳び胸のポスターは、たまたま最優秀賞をいただいた。だから、今年も・・、と知らず知らずのうちに考えていたため、受賞の連絡が最初なかったので、ちょっとがっかりしていた。
そして、がっかりしている自分をみて、自分の欲望に改めて気がつく。

宿泊したホテルの近くに、楽器屋さんがあり、そこでこんな本を偶然手にした。
「ヴァイオリニスト 20の哲学」(千住真理子著、ヤマハミュージックメディア)
「月を差す指」という章がある。
千住真理子さんが、高校生の時読んだ本に、音楽についてこんな話が書いてあった。
「ある少女が、美しい月を指さし、月がこんなに美しいことを多くの人に教えた。やがて少女は、月を指さす自分の指が気になってきた。そして、爪のケアに明け暮れるようになり、やがて美しい月のことは忘れてしまった」
音楽家が、美しい音楽を作ろうとしていて、技術を磨く。しかし、そのうち技術を磨くことに明け暮れ、音楽を忘れてしまうことがある。それはたいへん悲しいことだ。
海外で書かれたその本には、そう書かれていたそうだ。

学会発表などをしていると、ときどきその罠に落ち込む。
本当は動物を救うため、過去のデータを検討してよりよい治療法を模索したり、他の獣医師と情報を共有して、動物医療を進めることが、発表の目的である。日々技術を磨こうと思うのも、そのためだ。
ところが、他者より優れていることを誇示するようになったり、だれかから評価されたいと思ったり、自己を実現する目的にすり替わる。そういう危険を、いつも内在している。

美しい月を忘れないように!

 

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すやすや

 

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かない動物病院
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