はりねずみ通信

2016.09.26

日本臨床獣医学フォーラム、覚え書き

東京で行われていた日本臨床獣医学フォーラムに参加してきた(9月24日〜25日)。
この学会には、ほぼ毎年欠かさず参加している。さまざまな分野のレクチャーやパネルディスカッション、実習などが行われる。ボリュームがとても多いので、すべて聴くわけにはいかないが、小動物臨床のトレンドがわかる。つまり、いま何が求められて、どう進めばいいのかが、なんとなくつかめるのだ。
以下は覚え書き。

・犬アトピー性皮膚炎(永田先生)
世界獣医皮膚科学会で出された「犬アトピー性皮膚炎のガイドライン」をどう読むか、という話し。
さまざまな治療薬、たとえば経口ステロイド、アンテドラッグといわれる外用ステロイド、シクロスポリン、最近話題になっているオクラシニブという分子標的薬・・。ガイドラインでは、それぞれの薬剤に文献をもとにしたランク付け(A〜D)がなされ、エビデンスレベルの高低が示される。それをそのまま読むと、「結局どう治療すればいい?」と臨床獣医師は迷うことになる。永田先生は、急性期と慢性期、難治的な状態に分け、どうアプローチすればよいか、ガイドラインをどう利用すればいいか、をわかりやすく解説されていた。
まあ、ガイドラインとはそういうもの。いまわかっている最低限のラインを示すものに過ぎない。
それを読んだからといって、万全の皮膚科治療ができるわけではない。
ガイドラインをどう読んで、どう活かすか。皮膚科だけでなく、全般的な意味でも示唆に富む話し。

・癌性疼痛の話し
多くの飼い主さんは、動物の痛みや苦しみを取ってほしい、と強く思っている。もしかすると、病気を治すより重要なのは疼痛緩和かもしれない。
痛みの質によって、使う薬剤は大きく変わるという話し。多くの薬は普段から使っているが、より深く理解できた。
獣医師も飼い主さんも、もう少し早い段階で動物の疼痛管理を考えたほうがよい、という啓発。

・動物病院経営の話し
学会なのに意外、と思われるかもしれないが、動物病院をいかに運営するか、というのも重要なのである。
いま犬や猫の飼育頭数が減っている。このままいくと、多くの動物病院が倒産する、とのこと。こわい。

・胆嚢疾患のクリニカルレクチャー
臨床獣医師が胆嚢疾患の症例を報告し、治療が適切であったか、内科・外科の専門医の先生を交えディスカッションする、という企画。
胆泥症、胆嚢粘液嚢腫、胆嚢炎をどう治療していくか。個人的には言いたいことがたくさんあったが、質疑応答時間がほとんどなく、やや残念。時間が少なかったからかもしれないが、動物の痛みや臨床徴候の説明が少なく、手術画像や摘出した胆嚢の画像もない。エコー所見と病理検査のみでディスカッションしている印象(辛口)。
それにしても、会場が立ち見が出るほどの活況だったのは、驚いた。
胆嚢疾患は、みな困っているのだな。

・肺葉切除
VRセンターの宇根先生の講義。すばらしい。
あとでステープラーの選択法について質問に行ったら、本当に的確な助言をいただいた。さすが。

・関節疾患の内科的治療
日本大学、枝村先生。内科的治療から、リハビリテーション、再生医療まで。
再生医療について、枝村先生が中心となり、現在ガイドラインを作成中とのこと。エビデンスをもとに、正しく治療を選択しないと、動物や飼い主さんを傷つけるばかりでなく、社会的にも大きな問題であるとの警告。
逆に、有効と思われる治療法も解明されつつあるようで、希望を持つ。

・外科手術の上達法
北里大学、岩井先生。具体的な技術論ではなく、どちらかというと「精神論」の話し。
共感する話が多く、心打たれる。

img_9114
しずか

 

1件のコメント

  • 先生、いつもお疲れ様です。
    日曜日の面会時、ぴよちゃんと会いました!
    いつもはりねずみ通信で見てるから、実際に会えて感動しました(,,•﹏•,,)
    モカは、便の量は少なめですが、通常通りになってます。
    そして食欲旺盛でバクバク食べてますよ!
    ただ、足が痒いみたいで、足だけ洗っても大丈夫なら洗いたいのですが・・・??

    • mocamamaさん、学会でピヨが入院していました(^^)
      モカちゃんの足は、洗っても大丈夫ですよ。
      元気なようでよかったです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

最近のコメント

2023年
2020年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年