はりねずみ通信

2015.09.12

技術の習得

知識として知っているということと、それが実践できるということは異なる。
そこをいかに埋めるか。それは若い先生への教育の問題でもあるが、自分自身の問題でもある。

いま、自分自身を実験中なのであるが、あたらしい技術を身につけようとするとき、身体や心理に何が起こるかが、ややわかってきた。

今行っているのは、先日も少し紹介した腹腔鏡の器具で折り紙を折る、という作業である。
世の中にはいろいろな人がいるもので、人医でこれを行いYouTubeで公開している人がいる。まず、それを見たのち、自分でもやってみる。
初めての時が一番たいへんだった。全く思うようにできないのだ。30分以上かけてできあがったのは、くちゃくちゃの紙のかたまり。折り鶴にはとても見えなかった。

最初に頭に浮かぶことは、こうである。
「自分には才能がない」
「これをやることに、意味があるのか?」

おそらく学習者の多くは、ここでつまずく。
うまくできる人は特別な人で、自分はそうではない。無駄な努力をしてもしょうがない。そう思ってしまうのだ。
ここからが我慢である。
そういう心の声を押しやり、とにかく続ける。
私の場合は、自分にこう言ってみた。
「こうやってこの作業をすることは、無駄かもしれないが、すくなくとも腹腔鏡に触れている時間は蓄積される。なんらかの役に立つはずだ」
繰り返すうち、少しは上達する。そのときは、自分を褒めてやる。

そうして続けていると、上手な人がどうやっているのか、細部が気になる。
鶴を折るとき、菱形の形にする直前が難しい。手で折るときは、人差し指と親指で捩(よじ)るような仕草が必要だが、腹腔鏡下ではどうするのか。
うまい人のビデオを、もう一度見てみる。
すると、一番最初に漠然と見ていた動画を、目を凝らして見るようになる。
自分がそれをしなければならないから、必死で見るわけで、「うまいひとが上手にやっているなー」と眺めている時とは見方が違う。

実は、ここに腹腔鏡の上達の秘訣があるような気がする。
さらには、学習の根本原理がある。
つまり、「自分がすると思って見る」そして、自分でもしてみる。さらにうまい人のしていることをもう一度見る。その繰り返しが、上達につながる。

私がよく手術見学をする人に言うのは、「手順を見るな、ディティール(細部)を見ろ」ということである。
多くの人は、始まりから終わりまでの流れを見て、自分もできるような気になってしまう。メモを見ると、ほとんどの人は手順しか書いていない。
折り紙でいえば、「半分に折って、また半分に折り、折り目を付けて・・」というのが手順を見る見方である。そうではなく、鉗子でどういうふうにつまむか、その力(ちから)加減は、左手と右手の役割は・・、とディティールを詳しく見るべきだ。

奇しくも、この折り紙を腹腔鏡で折る医師は、ビデオの中で言っている。
「神(紙)は細部に宿る、なんちゃって」
ディティールの大切さを知っている人なのだろう。

IMG_7229
あきのひるね

 

 

 

1件のコメント

  • おはようございます。
    日進月歩動物医学が進歩している中
    勤勉で努力家の金井先生がトップクラスの獣医さん・・その金井先生が、姫路にいて下さる事に飼い主は
    感謝・・です。
    昨晩は、本当にありがとうございました。
    あんな、真夜中に・・先生が神様に見えました。
    私にとって、あんこはかけがえのない唯一の存在なのです。。
    依存し過ぎたらいけない事は分かっているんですけど・・。
    きなこがいなくなって、一年過ぎて、漸く気持ちが落ち着いて、私の中であんこは大事な大事な宝物なんです。
    本当に、ありがとうございました。    

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