はりねずみ通信

屈託(くったく)する

先日、井伏鱒二の「山椒魚」をもう一度読んでみて、大学の頃を思い出していた。
当時、井伏鱒二の作品にとても惹かれるところがあり、ほとんどの著作や関連する本を読んだ。関係の深い山梨へ旅行までしたので、よほど好きだったのだろう。

彼の作品には、「屈託(くったく)」という言葉が、ときどき出てくる。
登場人物が屈託しているとき、たとえばこんな表現で書かれる。
(洗濯して乾ききらなかった足袋を炉端であぶりながら)
「こんな場合にはだれしも自分自身だけの考えにふけったり、ふところ手をしたりして、明日の朝は早く起きてやろうなぞと考えがちなものです。そうして炭火であぶっているたびが焦げくさくなっているのに気がつかないことさえあります」(「屋根の上のサワン」)
「山椒魚」にもこんなふうに書かれている。
岩場に入り込んだ小蝦(エビ)に向かって、
「くったくしたり、物思いに耽ったりするやつは、莫迦(ばか)だよ」
そして、エビに向かってそう言いながら、自分も「・・いつまでも考え込んでいるほど、愚かなことはないではないか」、と思うのだった。

私自身、学生時代には物思いに耽ることが多く、この「屈託している」という気分はよくわかった。
自分はどこへ行くのか、何を目標にすべきなのか。それがわからないときは、屈託するしかないのである。

今になって思えば、そういう中途半端な自分も懐かしい。
この歳になってみると、自分の成すべきことや使命のようなものがはっきりしているので、屈託することは、もうない。

「山椒魚」を読みながら、昔の自分に出会ったような気がして、なんとなく恥ずかしかった。
でも、そういう宙ぶらりんな時期も、大事な時間だったのであろう。

 

 

 

 

 

「屈託(くったく)する」への2件のフィードバック

  1. 先生は、とっても純粋な方なのでしょうね。。
    私も学生時代「山椒魚」読みました。
    もう一度読み返したいと思います。。「今」どの様に感じるか・・楽しみです。
    ヘミングウェイの「老人と海」は、昔も今も同じ感覚?で読めます(^^)
    今日は、お休みなのに申し訳ございませんでした。
    アーモンドチョコ一箱全て食べていたのには、あまりにもびっくりしてしまい
    取り乱してしまいました。。私でも、一箱食べたら気分が悪くなってしまうのに・・。
    思いっきり手をのばして、取ったようです。。私が悪いですね・・
    本当に・・先生みたいな方が姫路にいて下さる事に飼い主は、涙が出る位感謝しております。有難う御座います。
    先生が言われたように、興奮状態で、パグ走りをしています(-_-;)

    1. きなこさん、昔読んだ小説などを読み返してみると、自分がどう変わったかがよくわかります。良くも悪くも、人間は変化していくことがわかりおもしろいです。
      チョコの種類や量によっては、危険になることがありますので、注意、ですね。

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