はりねずみ通信

変わる必要

犬には胆嚢疾患が比較的多い。胆嚢粘液嚢腫、胆石、胆嚢炎などである。
治療は薬による内科的治療と、胆嚢摘出を主体とした外科治療に分けられる。
薬で治れば一番なので、まず選択されるのは内科的治療であろう。では、どうなったら外科治療が必要なのか。
この手術適期の選択が、動物の場合、思いの外むずかしい。

一番の原因は、動物の自覚症状が乏しい、ということである。
本来は重症なのに、比較的元気に見えるのだ。
そのような状態で手術を選択することは、飼い主さんにとっても獣医師にとってもハードルが高い。
「元気であれば、薬で治療したい」
と飼い主さんは思うであろう。
一方獣医師は、
「元気な動物を治療して、もし何かあれば責任が問われる」
という思考が働く。
そのため、どうしても内科的治療を長く行いがちになり、適切な手術時期を逃すことになる。

手術に踏み切れない理由がもうひとつある。
それは文献上に示される周術期死亡率である。手術中または術後に動物が死亡する確率を、周術期死亡率という。
それが胆嚢摘出の場合、20〜40%といわれている。
つまり、胆嚢疾患があり手術を行わなければならないとき、
「10頭中、最大4頭は死亡します」
と告げなければならないのである。

人の医療では、胆嚢摘出術の周術期死亡率は0.03%程度といわれているので、20〜40%はあまりにも高い。
無論、各施設によって死亡率は異なり、すばらしく高い救命率を誇る施設もある。
それでも、外科を得意とする獣医師は「10%くらいの周術期死亡率ではないか」言うことが多い。

先日腹腔鏡下で胆嚢を摘出したトイプードル(体重1.4kg)は、ここ数ヶ月以内に胆嚢の破裂と癒着を繰り返していたはず(胆嚢周囲を観察すると、明らかに過去に破れていた形跡がある)なのだが、ずっと食事を食べていて、元気だったそうだ。そして、食欲がなくなり動物病院を受診したところ、「もう手術は無理」と判断された。

つまり、私たちが病気を発見できておらず、適切な時期に治療していない可能性がある、ということである。
先に「動物は自覚症状が乏しい」と書いたが、私たち人間の観察眼が鈍い、と言い換えたほうがよいかもしれない。

人間の医師に、獣医医療のこの現状を話したところ、
「だれも努力してこなかったのではないですか?」
と言われたことがある。
本当にそうだ。
周術期死亡率を盾に、手術を先延ばしにするような医療を行っているとすれば、はずかしいことだ。
手術適期を適切に定めること、手術の技術を高めることは、急いで行わなければならない重要事項である。


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