はりねずみ通信

2015.02.16

医療のかたち

学会に参加したとき、他の獣医師と話をする機会があった。
それぞれで獣医医療の目指す方向がちがうことがわかり、興味深かった。

ある先生は、
「だれでもできる治療が、医療である」
と言った。つまり、「ある特定の獣医師のみが特殊な技能でできる治療」、というものを目指すのではなく、多くの人ができるものを求めるべきである、ということ。
そうしないと、多くの動物が救えない。
再現性があることが、科学であり、医療である。たった一人の人にしかできない「技」のようなものは、医療ではない。
それは、本当にそうだと思う。

ただ、わたしはやや違う考えでいる。
やはり医療は特別な技能が必要だと思うのである。今の日本の獣医医療で足りないものがあるとすれば、技能を高めるシステム、であろう。
人の医療では、たとえば胆道十二指腸吻合を腹腔鏡でいかに確実に行うか、多くの医師たちが研鑽している。その手術はだれでもできる手術ではない。まず、腹腔鏡での基本的な手術ができることが大前提で、それに加え、より精密な技術を獲得していく。
すべてのひとがそれをできるかどうかは、わからない。
基本があって、その上、技術を高めるトレーニングを地道に行い、なおかつ才能があってはじめてできる手技、というものがある。
そうやってしのぎを削って行く中で、突出した技術を持つ人が生まれる。
その人が、また医療を進めていく。
そういった流れが、人の医療にはあると思う。

それを獣医医療でもできないだろうか・・。

「だれでもできる医療」と「特別な技能の医療」のどちらが正しいというわけではない。求める医療のかたちは、人によっても違っていい。

ただ、他の獣医師との会話で、自分が何を志向しているか、明確になった気がした。
他者との交流は、やはり重要である。

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よしよし

1件のコメント

  • ほんのちょっとの傷でも体の負担て大きです。開腹ならもっとでしょう。
    腹腔鏡手術のメリット、デメリットを考えて、
    特別な技術の医療を求めての飼い主、患者もいるのだから、人の医療のように飼い主側が手術を選択できるようになっていったらいいですよね。先生がんばってください。

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