はりねずみ通信

医療と物語り

オリヴァー・サックス著「道程(オリヴァー・サックス自伝)」(早川書房)を読んで、現代のデータ至上主義とも言える医学の「漠然とした違和感」が晴れた気がした。(オリバー・サックス先生は脳神経科医で、「レナードの朝」という映画の元となった本の著者である。この自伝を書き終えたあと、2015年に亡くなっている。本書の中にある、いきいきとしたエピソード等はとても書き切れないので、この記事には載せないが、こんな人生があるのかと驚くばかり)

病気を診断するためには、まずデータ収集が不可欠である。
問診や身体検査をし、プロブレム・リストを作る。血尿があるとすれば、膀胱炎・膀胱結石・膀胱腫瘍・・などと病気の候補をならべる。そして、それを鑑別するために、いくつかの検査を行う。尿検査・レントゲン検査・エコーなど。
もちろん、それは非常に重要なことで、軽んじるわけにはいかない。
けれど、データを収集することで、生き物のすべてを把握している「つもり」になってしまう。

オリバー先生は、当時異なる分野だと思われていた神経病と精神病を、博学とも言える生物学や神経学の知識をもとに融合しようとした。その際に用いた手法が、患者の「物語を紡ぐ」というやりかたである。
これらの患者が持つ、さまざまな社会的背景や置かれている状況を抜きにしては、疾患の正しい把握につながらない。そういう想いから、患者ひとりひとりの物語を詳細に記載し、病気の全体像に迫ろうとする。

それは、先ほど書いたようなデータ集積と分析をもとにする現代医療のあり方と矛盾していた。
そのため、当時の医学界ではほとんど無視されたようである。

私は読み進むにつれ「これこそが自分の求めていた医学の形だ」と直感し、興奮した。

なぜなら、動物を診るには、その動物が飼われている状況や飼い主の方のライフスタイル、あるいは哲学のようなものもすべて含まれるからである。それはまさに物語で、物語を除いたデータは、海で泳いでいるイカを知らずに、スルメを調べるようなものだから・・。

そして私がこうやって色々書いているのも、ストーリーを語りたいからに他ならない。
オリバー先生は、自らをストーリー・テラーだと言っているが、私はそういう意味で、勝手に親近感を持っている。

 

 

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こっちおいで

 

 

 

 

 

 

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