はりねずみ通信

利己と利他

T先生との会話のつづきである。
あるとき、人からこんなことを訊かれたとのこと。
「T先生は、なぜ仕事をするんですか?」
考えた結果、色々な治療法を学んで自分が成長したいから、という答えにたどり着いたのだそうである。そして、そう思う自分自身に少しショックを受けた、とのこと。

「ショックを受けた」という感覚は、私にもよくわかる。
獣医師は動物が好きで、動物の命を助けたいと思いこの世界に入る。飼い主さんや動物のため、という利他の精神が根本にあるはずである。ところが、自分が幸せを感じるのが、自分自身の成長、ということであれば、それは利己的なことだ。

私も腹腔鏡のセミナーや実習に足繁く通っていたとき、こんなことを自問したことがある。
「結局は自分が手術を上手になりたいだけじゃないのか」
自分が留守になると、飼い主さんやスタッフに迷惑がかかる。なかなか成果が出なかった時期でもあったので、「何のためにやっているのか」悩んでいた。

でも、利己と利他はそんなに明瞭に分離できるものなのだろうか。
自分の成長がだれかのためになるのなら、利己的と言えないのでは。

心理学者のアドラーがこんなことを言っている。
人間の究極の目的は、共同体への貢献である。
なぜなら、古代から人はたったひとりでは生きていけない生き物で、仲間と共に暮らすことが生きるためには必須だったからである。
人間にとって一番不幸なことは、自分が好きになれない、自分に価値がないと思うことである。
アドラーは極めてシンプルな答えを用意している。
「私は共同体にとって有益である」
「私は誰かの役に立っている」
そういう思いだけが、自らに価値があることを実感させてくれるのである、と。

アドラーは「幸福とは、貢献感である」とまで、言い切っている。
とすれば、わたしもT先生も、決して利己的ではないと思う。



IMG_8303
よせね




 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  • お問い合わせフォーム
  • よくある質問
  • 問診表ダウンロード
かない動物病院
兵庫県姫路市野里569-1
電話番号079-284-8172
病院案内
診療時間
9:00~11:30
×
16:00~19:00 × ×

※ 水曜日は外来休診
※ 院長(金井浩雄)は予約診療のみ(9:00~11:30、16:00~19:00)
休診 : 土曜日午後、日曜日