はりねずみ通信

乳び胸覚え書き3

術前と術後にCT造影検査を行ってみると、いくつかのことがわかった。
胸管の走行位置が、教科書通りではないのである。
通常、胸管は、犬では大動脈の右側、猫では左側を走行する、と書かれている。
そのため、犬の胸管結紮では右側開胸、猫では左側開胸をすべし、といわれていた。
ところが、実際の造影では基本は教科書どおりであるが、まれに(といっても10〜20%程度)胸管が反対側を走行する動物が存在する。

もともと教科書のデータは、健康な犬で調べられたものであるし、実際に造影して調査されているわけではない。間違いとは言わないが、動物により個体差があると考えなければならないのだろう。病的状態になると、より変位が起こる可能性もある。

で、ここからが私が述べたい本題なのだが、「胸管結紮後」である。
術前に造影された胸管を、手術で閉鎖する(わたしは、大動脈から胸膜を剥離し、奇静脈を含む部位を一括結紮しているーen-block法)。同時に心膜切除も行う。
そして、術後1週間目くらいにもう一度CT胸管造影を行うと、驚くことにほとんどすべての症例で「反対側に胸管の新しい走行が確認された」のである。

それでは治らないのでは?と思われる方も多いが、CT胸管造影で確認を始めてからの6例は、すべて治癒している。

通常胸管結紮のみで治療をした場合、治癒率は50%と言われているので、これは「心膜切除の併用が有効である」という大きな証明になると推察された。

もうひとつ、新しいことがわかった。
ICG(インドシアニングリーン)を術中肛門粘膜から注射し、特殊なカメラで蛍光染色法を行ったところ、術前にCT造影で確認された胸管は染色されるが、反対側の胸管は染色されなかった。
ハイビジョンカメラを用い至近距離で染色されていない胸管をみてみると、リンパ液は流れていないが、しっかりとした管腔構造を持っているのだった。
私は今まで、リンパ液が流れていないのでペタンと閉じているのではないか、と思っていた。

つまり、こういうことである。
胸管はもともと左右に存在することが多い(右利きか左利きか、くらいのこと)。
どちらかが優勢に流れていて、犬では右優性。
片方を閉鎖すると、反対側に開通する。
心膜切除にて静脈圧を下げることで、反対側に開通しても流量が減少するため、病気は治癒する。

ある程度予測されてきたことかもしれないが、それを画像的に確認されたことはおそらくなかったと考えられる。
治療法が確立した、という段階ではないが、
・心膜切除を胸腔鏡下でいかに確実に行うか
・左右の胸管をen-block法で結紮する
という方向へ進めばいいことがわかった。

(もしかすると、これを読まれた方が研究のような行い方で取り組んでいると思われるといけないので書くが、私が行っている方法はK先生が発見された造影法の成果で、動物への負担がほとんどない。むしろきちんと調べることで、より確実で低侵襲に治療できていると思っている)

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建築はだいぶ進んできた

 

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