はりねずみ通信

中央値を超えて

JBVP(日本臨床獣医学フォーラム)で、「獣医腫瘍学の天才」と呼ばれる米国専門医のカーナ先生の講演があった。
内容をわかりやすく伝えたい。
これは獣医師だけでなく、飼い主さんにも役に立つ内容だと思う。

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動物が癌(がん)と宣告されたとき、Aという治療とBという治療をする。
赤線のAは、階段を下がるのが早い。これはカプランマイヤーの生存曲線というのだが、20週間を超えるあたり(階段の一番下)で、すべての動物は死亡する、という意味。
横線の点線はその途中。50%が死亡するラインを表している。これを中央値と言うが、治療A(赤線)では、中央値は8週。つまり、治療開始後8週目に50%が死亡する、ということ。
一方、治療B(青線)では、中央値は22週。こちらの方が、効果がありそうである。

多くの飼い主さんは、この話を聞くと、
「Aという治療では、うちの子は平均8週間で死んでしまうのだ」
と思うだろう。
そして、Bという治療では22週。つまり、半年か・・。

そして、「AとB、どちらの治療を選びますか?」
と聞かれると、もちろんBという治療を選ぶ人が多いはずだが、
「2ヶ月生きるか、半年生きるかの違いなのか」
とがっかりするはず。

ところが、この平均何ヶ月とか中央値何ヶ月、というとらえ方に問題がある、というのがカーナ先生の話のポイントである。
グラフを見てほしい。
Bという治療では、最後の方に線が平らになる「プラトー」がある。
半数には満たないが、生き残っている動物がいるのだ。

癌によっては、このプラトーが低い位置に存在する場合もある。
それでも、多くの腫瘍疾患では、治療により生き残っていく動物がいる。

人間は「平均○○」という表現に弱い。
平均寿命75歳、というと、自分も75歳で死んでしまうと思う。
ところが、平均とか中央値というのは事実の一部に過ぎない。そこに偏差(分布の幅)があることを忘れてはならない。
(しかも、データそのものは、何年も前に作られたもので、現在の事情に合わないこともある。治療法は常に進化している)

カーナ先生のメッセージは、獣医師も飼い主さんもプラトーを目指し、希望を持って進んでほしい、ということだろう。
データや数字は、勝手に一人歩きをする。
どう読むか、がとても大事だということである。




「中央値を超えて」への4件のフィードバック

  1. なるほど。
    私は、かない先生と話しあってから決めたいですね。
    でも飼い主が動物の状態を一番よくわかってるから、その時、自分ならどうするかなとも思います。
    レックスの耳ですが、薬いれてもらってから4日後には頭ふるわで、散歩どころではなくなり、先生が学会にいかれてる間に、林先生に診察して頂き、先生に相談して、今週2回耳掃除を林先生がしてくださるとの事で、耳の薬は以前毎日私がいれてする薬にかえて、様子をみる事になりました。
    今のところ、レックスの耳はOK牧場(^^)しょーもないギャグってか、ふるっ( =^ω^)
    よろしくです。

    1. レックスさん、留守にしていてすみませんでした。また診てみますね。
      どういうときも、やっぱり話し合って決めたいですね(^^)でも、先のことはわからないし、一日一日元気に過ごせるようにしたいです。

  2. 動物治療も日進月歩、進化していると思います。
    癌なんて、言葉が話せる人間だけに存在すればいいのに・・と
    心の中でいつも思ってしまいます。。
    でも・・いざ愛犬愛猫が癌になってしまったら
    「奇跡」「もしかしたら・・」そんな気持ちで治療をお願いする事でしょう。
    私の知っているパグさんもリンパ腫で治療して寛解の状態で長い年月
    上手に病気と付き合っていました。。
    本当に一日でも長く一緒に・・と願います。。

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