はりねずみ通信

ロッシー

ロシアンブルーのロッシーは、とても気の強い猫だった。
爪を切るだけでも一苦労で、いつもすごい剣幕で威嚇してくる。新人の動物看護師などは、それだけでたじたじしてしまい、思わず及び腰になってしまう。それも無理はなかった。

こちらが緊張すると、動物にも伝わるので、こういうときは意識して力を抜くのがよい。「何でもない」というかんじで触れると、口では威嚇していても、意外に色々できるものである。
わたしはそうやって、シャーシャーと激しく鳴いているロッシーの耳掃除や爪切りを、もう10年以上してきた。
(うまく表現できないが、「麻酔もかけずにそんなことができるのか?」と驚く方が多いと思う。外から見るとそんな光景・・)

途中にはいろいろあり、下部尿路疾患のため排尿障害になって、夜間に尿閉解除をしたこともたびたびだった。
会陰尿道瘻増設術をしてからは、尿が出なくなることはなかったが、最近では慢性腎不全のため定期的に点滴をしていた。ロッシーは、もう14歳になっていた。

若いときに比べ少し勢いは減り、噛みつきそうになるほどの勢いはもうなかったが、やはり何をするにも攻撃的な様子は残っていた。でも、長年そうやってつきあってきたので、お互い阿吽(あうん)の呼吸のようなものがある。私はロッシーが嫌いな触り方はしないし、ロッシーにもそれがわかっていて、怒りながらも身を任せるようなところがあった。

5月。腎不全が進行し、入院した。
治療にかかわらず、病状は進行し、もう数日しかもたないだろうと判断されたため、「明日は家に帰してやろう」と思った。
入院室で、ロッシーは力なく横たわっていた。
その日も、毎晩していたように少しのあいだそばに座っていたが、寝ていたロッシーはしずかに立ち上がり、私の膝に乗った。
今まで、みずから寄ってくるようなことは決してしなかったので、驚いたが、少しのあいだそうしていた。ほんのわずかな時間である。その後、満足したのか、また元の位置に戻り、眠ったのだった。

数日後、ロッシーは亡くなった。
昨日飼い主のSさんが挨拶に来られた。
ロッシーは色々な事情で家にやってきたこと。途中ご主人さんが亡くなり家族が大変ななかで、いつも一緒にいてくれたこと。もう動物がいなくなったので、ここへ来ることがなくなるのが寂しいということ。
そういうことを静かに話された。

私も寂しかった。
動物とは言葉を交わせないが、ロッシーとは長年の信頼関係があったと、自分では思っている。
それは飼い主さんと動物の強い絆にはとうてい及ばないが、治療を通して間違いなくつながっていた「何か」。それは永久に失われてしまった。

いつか天国で再会したら、「ほんとは嫌いだったけど、ちょっと信頼していた」と言ってくれると嬉しい。






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かくれんぼ

 

「ロッシー」への2件のフィードバック

  1. 先生、こんばんは。
    ブログを読んで、涙が止まりませんでした。
    ロッシーちゃんは、きっと先生と会えるのはこれで最後だとわかっていたんですね。
    「ありがとう、本当は信頼していたよ。」って伝えたかったのかな・・
    ロッシーちゃんのご冥福をお祈りいたします。

    1. ジュディーさん、動物病院は動物たちにとって「いつも楽しい場所」というわけにはいきません。そんななかでも、彼らは周りが考えている以上に私たちのことを見ています。
      言葉を介さないコミュニケーションを行って、動物から信頼されるようになりたいです。

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